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風に惑う 2017かながわ衆院選(5)野党分断で改憲へ道

選挙 神奈川新聞  2017年10月29日 12:47

憲法改正には触れず、北朝鮮問題や経済政策などの実績を強調して政権継続への支持を訴えた安倍首相の演説=5日、川崎市多摩区
憲法改正には触れず、北朝鮮問題や経済政策などの実績を強調して政権継続への支持を訴えた安倍首相の演説=5日、川崎市多摩区

 「野党に共闘されると、こうなるという最たる例だ」。投開票から一夜明けた23日。県内で唯一候補を擁立した6区で議席を失った公明党の陣営幹部が、苦しい胸の内を明かした。

 戦略ミスだった。県内18選挙区のうち希望の党が擁立を見送ったのは6、8区のみ。残る16選挙区は希望とリベラル系野党(立憲民主、共産、社民党)の候補者が競合し、政権批判票が割れた。県内の公明関係者は、都政で協力する希望代表・小池百合子サイドから、事前に6区への擁立を巡り相談があったと明かす。希望に候補を立てさせておけば-。悔やんでも後の祭りだった。

 政権にとって手痛い黒星はあったが、衆院選の県内当選者29人のうち「改憲勢力」は与党(18人)と希望の党(3人)、日本維新の会(1人)と、実に4分の3以上を占めた。全国でも自公は改憲の国会発議に必要な3分の2を維持。「マスコミが『自民の補完勢力』と言っているだけ。ただ、憲法の議論はしっかりしようという立場だ」。辛くも9区を制した希望の笠浩史は野党の立場を強調するが、改憲の動きには党として同調する見通しだ。

 自民党にとってもこの結果は織り込み済みで、選挙戦は安全運転に徹した。例えば、首相の安倍晋三は解散後に街頭演説した県内3カ所すべてで、公約の重点6項目のうち「党是」でもある憲法改正にだけ触れていない。演説の大半は、雇用などの経済政策や北朝鮮問題に費やした。

 「メディアの反応がすごい(大きい)ことは街頭で言わない。言えば落選者が出る」。安倍の右腕である官房長官・菅義偉の側近はつぶやく。「選挙が終わったら、『公約に書いていたでしょ』ということだ」。沈黙は金。与党は労せずして、改憲勢力の増強に成功したのだ。

 自民圧勝が伝えられた22日夜。11区で早々に当選を確実にした小泉進次郎は横須賀市内の事務所で切り出した。「自民党が言ってきた国民政党とは何か。それが自分の中で、おぼろげながら見えてきた気がする」。「党の顔」として全国を遊説。並の党首以上に有権者と向き合った自負がこう言わしめる。

 「大企業、中小企業、自営業、専業主婦、農林漁業すべての声を聞くのは大変だが、自分は置き去りにされていないと思ってもらえるよう、すべて抱えていく。都会だけじゃない、地方だけじゃない。自民を支持しない声も抱えて進んでいくんだ」

 野党の迷走、分断の先にあった保守勢力の膨張。結党以来の悲願である改憲への道が開けた今、自民は真の「国民政党」にならなければいけない-。そのために党内改革の必要性を説く小泉の眼中に、もはや野党は入っていなかった。

 =敬称略、おわり


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