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第34回神奈川工業技術開発大賞 奨励賞 エース・E&L(相模原市南区)
挑む中小企業(5)聞こえ方25通りから

経済 神奈川新聞  2017年10月28日 12:38

集音器Chouju
集音器Chouju

 過疎地に住む、年金暮らしの高齢者が使える集音器を-。津田博通代表取締役社長(73)は、岩手県に住む高齢のいとこが、耳が遠いため家族とのコミュニケーションに不自由していることに胸を痛めていた。

 薬事法で医療機器に分類される補聴器は、高額な上に入手方法が限られ、購入後も病院での定期的な調整が必要だ。一方、特別な制約がない集音器は家電量販店で購入できる。そこで、高齢者が自分で調整でき、低価格だが補聴器と遜色ない機能を持つ集音器の開発を決意した。

 親会社のエースエンジニアリング(相模原市南区)は、大手電機メーカーの電子機器の設計・製作を数多く手掛けており小型化、低コスト化に自信はあった。補聴器を開発する技術もあるが「理念を実現するため、あえて集音器を開発した」と津田社長は振り返る。県の補助金も得て、3年前に開発に着手。機能をすべて盛り込んだ試作品を福祉施設の高齢者らに使ってもらいながら、必要最低限の機能に絞り込んだ。


高性能集音器「Choju(聴寿)」を装着した津田社長
高性能集音器「Choju(聴寿)」を装着した津田社長

 完成したのは本体とイヤホン、マイクで構成される高性能集音器「Choju(聴寿)」。耳栓型の商品などに比べると「不格好かもしれないが、性能にこだわった」。イヤホン型にすることで運動時の紛失や、入浴時の外し忘れ防止にもなる。本体重量は50グラムと軽量化にも成功した。単4型乾電池1個で、連続100時間使用できる。

 大きな特長は、左右それぞれについて音の高低のバランスを5段階で調整できる四つのダイヤル。自分で25通りの聞こえ方を選べる。左右の音量バランスも変更可能で、マイクには風防を取り付けてノイズを抑制した。イヤホンとマイクが離れ、ハウリングも起きない。ロータリースイッチ(音質調整をする四つの超小型ダイヤルの構造)や音量調整装置、マイク装置では実用新案も取得した。

 「困っているお年寄りの助けになる商品を届けたい」という誠実な思いは電器店店主らの共感を呼び、地域密着型の販路が広がりつつある。現在、テレビやスマートフォンに対応できる商品も開発中という。津田社長は「周囲とのコミュニケーションは認知症防止にもつながる。事業を通して社会に貢献したい」と話している。

 

◆エース・E&L 2016年設立。資本金500万円。電子機器の開発・設計・製作を行うエースエンジニアリングの100%子会社。高齢者向け製品の企画・開発・販売。従業員3人。相模原市南区麻溝台。


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