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時代の正体 表現の自由考
政権批判の不在「あり得ない」

時代の正体 神奈川新聞  2019年11月15日 10:23

松本武顕さん
松本武顕さん

 国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」の中止以降、自治体の長が公然と作品内容を批判したり、実際に行政が特定の作品を表現の場から排除しようとしたりする動きが相次ぐ。戦時中の日本の加害、政権批判-。作品はいずれも現政権周辺や支持する保守層が反発する表現であり、それを行政が「忖度(そんたく)」する構図だ。近年、テレビ現場の萎縮を目の当たりにしてきた映像ディレクターの松本武顕さんは強く訴える。「政権に背かないという注釈が付いた表現の自由などあり得ない」

 「忖度の波の強さと、その波の行き渡りよう」。松本さんは、それを痛感する日々だという。

 2016年に監督として撮影したドキュメンタリー映画「ハトは泣いている-時代(とき)の肖像」を横浜や東京、埼玉の公民館など公共施設で連続上映している。公的機関が表現を排除した2つの事件を通して、表現の自由の侵害がまかり通る社会を問う作品だ。不自由展の中止を受け、多くの人に問題を改めて考えてほしいと上映を企画した。

 自身や主催する他のメンバーが上映会のチラシを置こうと会場などに持ち込み、受け付けで止められることが重なった。「横浜の地区センターは『表現の自由を描く』と説明すると顔色が変わって内容を詳しく聞き、主催者の一つに『憲法を考える映画の会』という名を見つけるや館長室に通された」。埼玉県の公民館では「内容が政治的」と、当初は断られたという。

 いずれも拒否される法的根拠はなく、最終的には許された。だが行政の末端までが「表現の自由」や「憲法」という言葉に神経をとがらせる現状が歴然としてそこにあった。

 松本さんが同作品を製作しようと思ったきっかけには、自身の体験があった。

 イラク戦争の開戦から10年が経過した13年、フリーのテレビディレクターとして、この戦争を振り返る企画をNHKに提案し、実現することになった。とりわけ当時の政権批判は欠かせないと思った。「開戦時の小泉純一郎政権が自衛隊を完全武装させ、憲法違反を既成事実化した経緯はきちんと触れる必要がある」と撮影を進めた。

 ところがNHKの上層部から「どうしてもそこには触れないでくれ」と止められた。抵抗したが覆らず、結局、ディレクターを交代する事態となったという。

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