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書き手の心を感じる一冊届ける 古都・鎌倉の書店主の思い

カルチャー 神奈川新聞  2019年11月11日 06:00

「地域に開かれた店であり続けたい」と話す金野さん =鎌倉市大船3丁目
「地域に開かれた店であり続けたい」と話す金野さん =鎌倉市大船3丁目

 地域に開かれた店を目指し、ユニークな挑戦を続ける書店の店主がいる。「ポルベニールブックストア」(鎌倉市大船3丁目)の金野典彦さん(53)。かつて海外を旅した経験などを基にした視点で本を取りそろえ、書籍や地域にまつわる催しも開く。11月に開店1周年を控える金野さんは「多様性にあふれる世界の魅力を伝え、誰かの生きる力につながるような出会いを提供したい」とますます意欲を燃やす。

 木の香りが広がる約30平方メートルの店内に、3500冊ほどの書籍が並ぶ。インターネットの販売が隆盛となり、毎年7万点以上の新刊が世に出る中、金野さんは「誰かにとって大切な一冊となるようなものを責任を持って紹介したい」との考えで店を構え、扱う本を選んでいる。

 並ぶのは、人文・社会系の分野が中心。生き方や働き方についての書籍、国内外の旅の出来事をつづったエッセイ集、地域文化に関連した本など、ハウツー本ではなく「著者の心の奥から生まれた本」ばかりだ。他ではなかなか手に取れないものも少なくなく「『こんな本があったんだ』とお客さんが喜んでくれるとうれしい」と言う。

 その幅広さは、金野さんのこれまでの歩みと関係している。横須賀に生まれ、大学卒業後は東京都内の広告代理店に4年間勤務。その後は「世界を回りたい」と1年8カ月間、計30カ国を旅した。


湘南モノレールの尾渡社長と参加者らが和やかな雰囲気で交流したトークイベント =5月、鎌倉市大船3丁目
湘南モノレールの尾渡社長と参加者らが和やかな雰囲気で交流したトークイベント =5月、鎌倉市大船3丁目

 帰国後は都内の出版社に16年間勤務。「世界には多様な地域があり、人々がそれぞれのまちでたくましく生きている。体感した地域の面白さを、いつか仕事を通じて伝えたい」。長年抱いてきた思いから書店を開こうと決断し、「人と人の距離の近さ」を感じた大船エリアで開業した。

 大切にするのは、来店者の好奇心を刺激すること。これまでに著者や編集者らに直接話を聴くなどの催しを10回程度開催している。

 5月末には地元企業の魅力を探ろうと、鎌倉に本社を置く湘南モノレールの尾渡英生社長を招いたトークショーを企画。約30人の参加者から「湘南モノレールの目指す姿は」「今後やりたい施策は」といった質問が飛ぶなどにぎわった。

 「地域に開かれた店」を目指し、この秋からは新たな仕掛けを用意。読書会などイベント利用に、店を貸し出す企画なども始めた。

 正直に明かせば、経営は赤字。だが、金野さんは前向きだ。世界各国を旅して得た経験の数々が土台にある。「社会を見渡すと、分断が進んでいるように見える。そんな時代だからこそ世界の多様性や、地域の面白さを伝えたい。ここに来れば生きる力が湧いてくるようなお店にしたい」

 問い合わせは、ポルベニールブックストア電話0467(40)5102。


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