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第34回神奈川工業技術開発大賞 大賞 鶴見精機(横浜市鶴見区)
挑む中小企業(1)水深4000メートル地点を観測

経済 神奈川新聞  2017年10月24日 12:00

水深4千メートルまでの水温や塩分濃度などを観測できる「Deep NINJA」を開発した鶴見精機の立川社長
水深4千メートルまでの水温や塩分濃度などを観測できる「Deep NINJA」を開発した鶴見精機の立川社長

 2012年8月、北太平洋。世界で初めて、水深4千メートル地点の水温・塩分濃度の観測に成功した。それまでの鶴見精機の装置の最大水深は2千メートルで、一気に距離を倍に更新したことになる。「深海用プロファイリングフロート『Deep NINJA(ディープニンジャ)』」は、地球温暖化やエルニーニョ現象などを予測、議論する上で重要なデータを世界中の研究者たちへと供給している。

 南大洋やインド洋など、これまで投入されたのは計23本。大賞受賞に立川道彦社長(65)は「率直に鶴見精機という会社の技術が評価されて、結果的に社会貢献できることはありがたい。社員の努力の結集だと思っている」と喜んだ。

 海洋研究開発機構(横須賀市)と共同で開発に着手したのが10年。特に苦心したのが「浮力エンジン」だ。

 装置本体に入れた油を、装置に取り付けた袋に出し入れすることで浮力を調整し、海中で忍者のように浮き沈みを繰り返す。アルミニウム合金を厚くすれば耐圧はよくてもその分、重くなってパワーを消耗してしまう。いかに軽量化して、高圧下でも高い精度で動き続けるか。試行錯誤を2年間続け、トータルバランスの取れた高さ2メートル10センチ、重さ50キロのディープニンジャが完成した。

 浮上する際に水温や塩分を観測し、海面で衛星を介してデータ通信する。だが、受信も発信も可能なアンテナを備えたことで、研究者の要望があれば地上から観測パターンを変更できることも利点という。

 世界の海の平均水深は3800メートルと言われる。「ある意味では(4千メートルを観測できるディープニンジャが)ガイドラインになってきた。受賞を励みにして、他の開発に取り組みたい。深さ(を求めること)も当然だが、海水温度、塩分濃度以外に、計るパラメーターを変えたい」と立川社長。1年以内をめどに、今度は海水に溶け込んだ酸素の量を測定できるセンサーも搭載した新商品を発表する予定でいる。


 「神奈川工業技術開発大賞」の表彰式が23日、行われた。選ばれたのは、県内の中堅・中小企業が開発した多様なジャンルの工業技術・製品計6件。それぞれ、産業の発展や国民生活の向上に役立つとして評価された。受賞したそれぞれの技術・製品を紹介する。

◆鶴見精機 1947年設立。資本金2100万円。海洋観測機器、水質監視装置の設計、製作、販売、保守・点検。従業員82人。横浜市鶴見区鶴見中央。


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