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幻想的な絵柄で魅了
生誕160年 マックス・クリンガー版画展 葉山・県立近代美術館

カルチャー 神奈川新聞  2017年10月21日 18:08

クリンガー作品を1枚ずつじっくり鑑賞できる会場=県立近代美術館葉山
クリンガー作品を1枚ずつじっくり鑑賞できる会場=県立近代美術館葉山

 ドイツの美術家マックス・クリンガー(1857~1920年)の精緻な版画を紹介する「生誕160年 マックス・クリンガー版画展」が、県立近代美術館葉山(葉山町)で開催中だ。幻想的な絵柄で見る者を引きつける不思議な魅力が堪能できる。

 クリンガーは生涯で14の連作版画を制作したが、同展ではこのうち7作品を1枚ずつ並べ、1作品は製本された状態で展示。交流状況がうかがえる蔵書票や国内に1点だけ存在するとされる彫刻も並ぶ。

 「手袋」は、ローラースケート場で拾ったある女性の手袋をきっかけに、クリンガー自身とされる男性が恋心を抱き、女性への憧れや恋敵の存在、失恋へと広がる妄想を表現している。


クリンガー「手袋」(作品6)の第2葉「行為」(第4版、1898年〈初版は1881年〉、県立近代美術館蔵)
クリンガー「手袋」(作品6)の第2葉「行為」(第4版、1898年〈初版は1881年〉、県立近代美術館蔵)

 こうした現実の世界と非現実の世界が繰り広げられる点が、クリンガー作品の特徴だ。「イヴと未来」ではアダムとイブの楽園追放と同時に、人間を害する自然や死への恐怖が描かれている。

 「ドラマ」には、子どもと心中を図ったが自分だけ助かってしまった貧しい母親や蜂起する民衆など、社会的な要素も見られる。

 ただし、自らは裕福な工場主の次男であり、「批判的な視線は感じられない。同時代の人間社会として淡々と見ている」と同館の籾山昌夫学芸員は話す。

 科学技術や産業が発達していた当時のドイツ。人間があらゆる物を作り出し、神に変わる存在ともみなされた。こうした時代に生きたクリンガーが、神と人間、人間と死、現実と非現実といった対比を意識したのは当然かもしれない。

 手彫りとは思えないほど精緻な線も見どころだ。

 同会場で開催中のコレクション展「1937 モダニズムの分岐点」は、1937年前後に焦点を当て、当時の近代美術と国内外の前衛美術の動向を油彩画や版画など約50点で紹介。

 圧巻は、滝口修造と山中散生(ちるう)という二人の詩人、評論家が、アンドレ・ブルトンら海外のシュールレアリストらと交わした書簡や原稿の膨大な展示だ。

 また、プロレタリア演劇の演出を手掛け、治安維持法に違反するとして何度も逮捕された村山知義の囚人番号札や新聞記事を貼ったスクラップブックは、現代への警鐘とも見える。

 両展とも11月5日まで。月曜休館。一般1200円、20歳未満・学生1050円、65歳以上600円、高校生100円。問い合わせは同館電話046(875)2800。


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