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シンプルな美しさと機能性 県立近代美術館、2館体制整う

カルチャー 神奈川新聞  2019年10月28日 15:57

 改修工事のため約2年にわたって休館していた県立近代美術館鎌倉別館(鎌倉市雪ノ下)がこのほど、リニューアルオープンし、同館葉山(葉山町一色)との2館体制が本格的に整った。葉山では、フィンランドを代表する工業デザイナーを紹介する「カイ・フランク」展、鎌倉別館では「ふたたびの『近代』」展を開催中だ。それぞれの見どころを紹介する。


ガラスアートが並ぶ「カイ・フランク展」=県立近代美術館葉山
ガラスアートが並ぶ「カイ・フランク展」=県立近代美術館葉山

葉山/「カイ・フランク」展

 カイ・フランク(1911~89年)は、安価で使い手の大衆のことを考えた食器デザインを生み出し、「フィンランド・デザインの良心」と呼ばれる人気デザイナー。現在もロングセラーとなっている食器類やアートとして手掛けたガラス作品など約300点を展示している。

 第2次世界大戦後のフィンランドは、ロシアに多額の賠償金を支払うなど貧しい国だった。カイ・フランクは「ディナーセットを破壊する」をモットーに、自由な組み合わせで使用できる汎
用(はんよう)性が高い食器シリーズ「キルタ」を発表。積み重ねできる四角い皿やタンブラーは、収納場所に困る狭小住宅が多いフィンランドで歓迎されたという。

 同展では、こうした食器類を円や円すい、三角、四角など六つの幾何学的形態に着目して紹介しており、シンプルな美しさと機能性を生んでいることがよく分かる。

 一点もののガラスアートは、同館の海が見える展示室にずらりと並ぶ。日の光によって、多彩な表情が堪能できる。3度も来日したカイ・フランクが、自ら撮影した写真も展示。63年の来日時はほとんど神奈川に滞在したという。市井の人々に向けた温かいまなざしが伝わる。

 同館の高嶋雄一郎主任学芸員は「フィンランドでカイ・フランクの食器を使っていない家庭はないとされるほど、いい意味でありふれている。使う側のさまざまな事情を考慮してできたもので、デザインは生活の中から生まれるものとの思いがあったのではないか」と話した。

 12月25日まで。11月4日を除く月曜休館。一般1200円ほか。問い合わせは同館葉山☎046(875)2800。


えりすぐった名作が並ぶ「ふたたびの『近代』」展=県立近代美術館鎌倉別館
えりすぐった名作が並ぶ「ふたたびの『近代』」展=県立近代美術館鎌倉別館

鎌倉別館/「ふたたびの『近代』」展

 鎌倉別館のリニューアルオープン記念展「ふたたびの『近代』」には、所蔵する近代洋画の名品を中心にえりすぐった54点が並ぶ。

 84年の開館時に開催した「日本の近代洋画」展を受けて、変化するコレクションの姿をたどり、現在ならではの視点を取り入れた。

 会場に入ると、松本竣介「立てる像」、古賀春江「窓外の化粧」、前田寬治「裸婦」、岸田劉生「童女図(麗子立像)」の4点が目に入る。故土方定一館長が「四天王」と呼び、目を掛けていたという。

 壁は木地が白壁になり、ガラスケースの外側に可動式の壁が設置された点は「かつての鎌倉館と似ている雰囲気がある」と同館の西澤晴美学芸員。発光ダイオード(LED)の照明器具に取り換えたことで、波状の天井がよく見えるようになった。「素材にこだわる大高正人建築の魅力もきちんと伝えていると思う」

 2020年1月19日まで。11月4日と1月13日を除く月曜、12月29日~1月3日休館。一般600円ほか。問い合わせは同別館☎0467(22)5000。


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