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「ホームレス襲撃」と命の重さ 横浜で22日上映会

社会 神奈川新聞  2019年10月21日 10:37

ホームレスの人たちや日雇い労働者らに寄り添う社会の重要性を語る渡辺孝明監督=9月7日、かながわ労働プラザ
ホームレスの人たちや日雇い労働者らに寄り添う社会の重要性を語る渡辺孝明監督=9月7日、かながわ労働プラザ

 1982年末から83年にかけて山下公園(横浜市中区)など市内中心部で起きた「ホームレス襲撃殺傷事件」。社会に衝撃を与えた事件を扱ったドキュメンタリー映画の上映会と講演会が22日、横浜・寿地区で開かれる。猛威を振るった台風19号でホームレスの男性が都内の避難所で受け入れを拒否されるなど、事件から40年近くが経過した今も排除が残り、19人が犠牲となった相模原障害者施設殺傷事件とも通底する。監督の渡辺孝明さん(70)は貧富の格差がさらに広がる時代を迎え、生きることの意味と、かけがえのない命の重さを訴える。

 この事件は、関内駅周辺や横浜スタジアム、山下公園などで少年らが8回にわたり寝泊まりしていた人たちを襲い、3人が死亡、13人が重軽傷を負った。襲われた人たちは、かつて寿地区の簡易宿泊所で暮らしていた日雇い労働者だった。

 上映作「寿ドヤ街 生きる2」(84年公開)は、事件の衝撃に揺れる寿地区に渡辺さんがカメラを向けた。住民らが事件の本質を見直そうと、襲撃を受けた際の状況を再現した芝居を演じる様子などがフィルムに刻まれている。

 傷害致死の疑いで逮捕されたのは、市内の中学生5人を含む少年10人だった。「街の清掃美化に協力した」などと供述、“生きる意味のない命”として排除したことに社会に戦慄(せんりつ)が走った。

 9月に行われた第1作の「寿ドヤ街 生きる」(81年公開)の上映会と講演会で渡辺さんは「『どうしようもない』というやるせない思いが(自分自身に対して)あったのでは」と、少年たちが置かれていた希薄な存在意義を想起した。「自分が置かれた状況をどうしても越えられない人たちの姿を、世間はばかにしたり、あげつらったり、『あんな風になってはいけない』と言ってきた。しかし、それは自分の中にある『どうしようもなさ』に通じることだと思う」

 命が奪われることは絶対にあってはならない。渡辺さんは「どんな人にもそれぞれに物語がある。映画を通して、それを発見できた。つまり命、生きることが全てだ」と強調する。ホームレスの人たちへの排除はその後も各地で続いており、さらには子どもたちへの貧困の連鎖など、社会が抱える問題が寿地区に縮図となって表れる。「映画はまだ未完成なので、来年撮ろうと思っている」と話し、撮影すべきことはまだまだ残っていると意欲を示す。

 会場は寿地区にある「かながわ労働プラザ」(同区)。上映は午前11時半からと午後2時半からの2回。渡辺監督の講演は同1時10分から。入場料は一般1300円(前売り千円)。問い合わせは、主催の横浜キネマ倶楽部電話080(8118)8502=午前10時~午後6時。


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