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ラグビーW杯
英雄の友情宿る国旗 日本戦は形見と「南ア応援」

スポーツ 神奈川新聞  2019年10月20日 07:30

チェスター・ウィリアムズさんの形見となった南アフリカの国旗を広げる加藤丈司さん。右はチェスターさんのパネル=ラグビーダイナーセブンオウス
チェスター・ウィリアムズさんの形見となった南アフリカの国旗を広げる加藤丈司さん。右はチェスターさんのパネル=ラグビーダイナーセブンオウス

 ラグビー・ワールドカップ(W杯)準々決勝の20日、日本は南アフリカと対戦する。横浜市中区のバー「ラグビーダイナーセブンオウス」の加藤丈司さん(49)は、南アを応援すると決めた。その訳は、店内に大切にしまわれた1枚の国旗にある。

 「これは家宝です」と、加藤さんは「虹の旗」を広げた。アパルトヘイト(人種隔離)政策撤廃後の1994年に一新された南アのカラフルな国旗は、国民の多様性からそう呼ばれる。9月に心臓発作で急逝した元南ア代表、チェスター・ウィリアムズさん(享年49)の形見だった。

 チェスターさんは自国初開催の95年W杯に、チーム唯一の黒人選手として出場した。初優勝に貢献し、人種融和の象徴として語り継がれている。元ラガーマンの加藤さんにとって、同世代のチェスターさんは「ヒーロー」だった。

 2人は、南アのホテルオーナー、ピート・ゴッゲンズさん(56)を通じて知り合った。加藤さんは昨春、W杯日本大会を記念したクラフトビールの商品化をゴッゲンズさんに相談。完成したのが、チェスターさんがプロデュースした「チェスターズIPA(インディア・ペールエール)」だった。チェスターさんは児童支援の財団を運営し、売り上げの一部を寄付する契約で協力を快諾していた。


チェスターさんの国旗をピート・ゴッゲンズさん(右)から受け取る加藤さん=10月3日、南アフリカ大使公邸
チェスターさんの国旗をピート・ゴッゲンズさん(右)から受け取る加藤さん=10月3日、南アフリカ大使公邸

 チェスターさんは、今月3日に南ア大使公邸(東京都港区)で開催されたチェスターズIPAの披露式典に合わせて来日する予定で、セブンオウスにも来店するつもりだった。手土産に南アのチーム旗をプレゼントすると約束し、加藤さんは居酒屋や銭湯に連れて行くと伝えていた。

 主役のいない披露式典。加藤さんは突然、追悼スピーチに立ったゴッゲンズさんに手招きされた。おもむろに手渡されたのが、「虹の旗」。ケープタウンのチェスターさんの自宅に掲げられていた国旗だった。妻マリアさんが「セブンオウスに置いてほしい」とゴッゲンズさんに託していた。「チーム旗ではなかったけれど、約束を覚えていてくれた」。加藤さんは涙ぐんで受け取った。

 日本にとって南アは、15年W杯で大金星を挙げた相手。20日の客席の予約は、その再現を期待するファンで埋まった。「店内はアウェー。南アを応援するのはぼくだけでしょう」と加藤さんは笑う。チェスターさんの財団を支援するチャリティーTシャツも作った。

 チェスターさんが亡くなったのは、日本-南アの壮行試合があった9月6日だった。「天国で再戦を楽しみにしているはず。どちらが勝っても、きっと喜ぶ」


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