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「保存してくださる方に」 鎌倉・旧大佛次郎茶亭、売却へ

話題 神奈川新聞  2019年10月09日 05:00

今月5日に一般公開された旧大佛次郎茶亭=鎌倉市雪ノ下
今月5日に一般公開された旧大佛次郎茶亭=鎌倉市雪ノ下

 作家大佛次郎(1897~1973)が鎌倉文士らとの交流などに活用した旧大佛次郎茶亭(鎌倉市雪ノ下1丁目)が、売りに出されている。築100年ほどの旧茶亭は、市指定の景観重要建築物。所有する大佛の養女である野尻政子さん(90)と息子芳英(よしふさ)さん(70)が維持管理が難しくなり、売却を決めた。2人は建物を保存し、後世に残してくれる人を求めている。

 趣あるかやぶき屋根の旧茶亭は、鶴岡八幡宮近くの閑静な住宅街にたたずむ。市によると、木造平屋で、床面積は約155平方メートル、敷地面積は約千平方メートル。1919(大正8)年ごろの建築とされる。

 大佛が設立の発起人となった日本初のナショナル・トラスト団体「鎌倉風致保存会」によると、旧茶亭は大佛が書斎や文士仲間の交流の場などに使った。庭には四季を彩る花々が咲き、大佛は毎年しだれ桜が咲くころに多くの友人を招き、宴を開いていた。

 建物は大佛が亡くなった以降、親族が維持管理を担っている。同保存会が貴重な建物を多くの人に見てもらおうと毎年4、10月に2回公開しており、市民にも親しまれている。

 一方、芳英さんによると、市や保存会から助成も受けるが、維持管理費が負担になってきた。10~20年に一度のかやぶき屋根のふき替えに300万円ほどかかるほか、庭の草木を手入れする費用や土地の借地料などもかさむ。

 市への寄贈も考えたものの、厳しい財政事情からうまく運ばなかった。政子さんが高齢であることも踏まえ、6月ごろに「建物を保存してくださる方に売却するほかに道はない」(芳英さん)と決めた。

 相談を受けた市内の不動産仲介業「鎌倉R不動産」が現在、買い取り手を探している。景観の維持を前提とし、改修しても既存の建物の形を生かすことを考えてくれる人を対象にしているという。

 生前の大佛を知る芳英さんは「明るく、照れ屋で、都会的でおしゃれな人だった」と懐かしむ。「鎌倉の風情ある町並みや原風景が失われていくのは、住民としても、大佛の孫としても悲しく、心苦しい。どなたか保存してくださる方に引き継ぎたい。心からの気持ちです」と話している。


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