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時代の正体 ヘイトスピーチ考
陳情書(下)差別放置は社会を破壊

時代の正体 神奈川新聞  2019年10月06日 10:20

 名前と顔を明かし、ヘイトスピーチに反対の声を上げた崔江以子さん(46)をヘイトツイートで痛め付け続けた「極東のこだま」。法の裁きを求める在日コリアン女性の陳情書には、崔さんの勇気に重ねる思いがそれぞれつづられ、差別は今ここに始まったことではないとあらためて教えてくれる。崔さんと同い年の在日3世の女性は「そもそも」と書き起こした。


ツイッターの「極東のこだま」のアカウント画面。県警の捜査後にツイートは非公開となった
ツイッターの「極東のこだま」のアカウント画面。県警の捜査後にツイートは非公開となった

 私たち在日韓国・朝鮮人は長い間、日本社会で何の理由も無く虐げられ、侮蔑されて生きてきました。この先も正義がなされない、弱い立場の人間をますます苦しめる社会を未来永劫(えいごう)に続けることは本当に正しいことだとお考えでしょうか。

 女性は在日韓国人として生きる困難さに幼少から触れてきた。祖母は憲兵に殴られるなど戦時中に受けた暴力の数々を語り、母からは朝鮮人を侮蔑する教師がいたといった理不尽な差別の存在を教わった。自身も教師や同級生、近所の人が韓国・朝鮮人をばかにする物言いを身近にして育ち、「この国では韓国人であることは大変粗末に扱われるということなのだと身をもって感じてきた」。

 こうしたことから逃れるため、他のほとんどの在日家庭がそうしているように私たちは皆、通名(日本名)を使用し生活していました。現在も私以外の家族、親戚は皆、通名を使い、韓国人であることを周囲に知られることを極度に恐れています。

 自身は地元を離れ、家族に「迷惑」をかけないですむ大学進学の際、本名である民族名を使うことにした。見た目では日本人と区別がつかず、名乗らなければ在日韓国人とは知られない。そうして自分を守っていたつもりだったが、「成長するにつれ出自を隠すことが徐々につらくなっていった」。就職や結婚といった人生の節目で、まるで悪いことを明かすかのようにそっと告白をする。そんな人生を死ぬまで続けることはとてもできないと思ったからだった。

 誰もがありのままを生きられる社会の実現を願うからこそ、寄せる思いは強い。

 同じ歳の在日の女性である彼女の勇気と行動力に心から敬意を持ちました。日本の差別を知っている者としてどれほどの恐怖を感じながら、それでも正義感を持って大変な苦労に立ち向かわれたのか、そのことを思うと感謝と同時に申し訳なさも感じます。

 だからこそ無罪放免などということは許されない。万が一、不起訴という結果になったら-。

 このような匿名の脅迫が罪に問われることなく横行するのであれば、私たちは今以上におびえて暮らさなくてはならなくなります。自分の意見を言えなくなるだけではなく、出自を隠して差別に反対する声もあげられなくなります。そのような社会には絶望しかありません。

 そうつづった別の在日3世の女性は「私たちも人間で、人間としての尊厳を持って生きる権利がある。崔さんが受けた匿名の相手からの脅迫は私たちを沈黙させ、言葉だけでなく尊厳を奪う行為だ」と断じる。

絶望

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