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台風15号 千葉被害
鋸南ビール救え 廃棄予定分を寄付募り提供 川崎

話題 神奈川新聞  2019年10月05日 20:00

醸造発 支援の輪


引き取った鋸南麦酒と店に置かれた募金箱
引き取った鋸南麦酒と店に置かれた募金箱

 台風15号の被害に遭った千葉県鋸南町のクラフトビール醸造所の支援に、川崎市の醸造技師らが奔走している。停電の影響で本来の味を保てなかったために廃棄しようとしていたビールを引き取り、愛飲家から寄付金を募った上で提供する試みだ。仲間の窮状を思う気持ちは同業者に広がり、「うちでも扱いたい」といった声が相次いで寄せられている。

 被害に遭った同町の「鋸南麦酒」(岡村拓寛工場長)の支援に乗り出したのは、昨年開業した「東海道ビール川崎宿工場」。経営者の岩澤克政さん(51)は2年前に開業した岡村工場長と知り合いだった。

 被害を伝える報道が少ないとの指摘も出ていた中、岩澤さんは9月13日に同町を訪問。予想していたよりもひどい状況を知った。鋸南麦酒の醸造所も屋根の一部が飛び、停電が続いていた。


田上さん(右)から鋸南麦酒を受け取る鍵屋醸造所の佐藤さん =川崎市川崎区の東海道ビール川崎宿工場
田上さん(右)から鋸南麦酒を受け取る鍵屋醸造所の佐藤さん =川崎市川崎区の東海道ビール川崎宿工場

 東海道ビールの醸造技師・田上達史さん(40)は岩澤さんから話を聞き、停電の影響でビールに被害が及ぶことをすぐに察した。会員制交流サイト(SNS)で連絡を取ると「すべて廃棄する」とのことだった。

 醸造したビールは5度ほどで冷蔵するが、停電が4日間続き、最終的には19度まで温度が上がってしまった。飲むことには全く問題はないが、味が変質し、本来の鋸南麦酒として販売できないためだ。

 「すべて引き取ります」。田上さんは面識のなかった岡村さんに伝えた。かつて小さな醸造所を一人で営んでいた。クラフトビール造り、経営の重みは身をもって知っていた。

 「会社として何とかできませんか」。田上さんは岩澤さんに相談。支援策を模索していた岩澤さんは、瓶詰めにしてもらい、引き取った上で支援の寄付金を募り、そのお礼に鋸南ビールを配ることに決めた。

 停電の影響を受けたビールは330ミリリットル瓶で約1800本分。9月19日、岩澤さんや田上さんら東海道ビールのメンバーが鋸南麦酒に向かった。5種類のクラフトビール280本をまずは引き取った。

 「十分おいしいです」「ワンコイン500円と交換で鋸南ビール1本差し上げます」-。20日、田上さんがフェイスブックで今回のいきさつを書き込むと情報は一気に拡散。21日からの3連休ですべてのビールがなくなった。

 クラフトビールの同業者から「うちでも扱いたい」との問い合わせが全国各地から届いている。

 幸区で「鍵屋醸造所」を営む佐藤学さん(39)もその一人。「レジ横に置いて寄付を募っていますが、集まりがいい。醸造技師同士、横のつながりで微力ながら力になりたい」

 田上さんは話す。「こういう時だからこそ、皆でビールを飲んで盛り上げたい」

 寄付についての問い合わせは、東海道ビール川崎宿工場電話044(272)3639。


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