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市民連合事務局担当・芝田万奈さん 2017衆院選
時代の正体〈532〉誰にでも変えられる 不公正な政治を問う

選挙 神奈川新聞  2017年10月07日 02:00

市民連合の事務局を担当している芝田万奈さん
市民連合の事務局を担当している芝田万奈さん

【時代の正体取材班=田崎 基】激動する選挙の構図を前に、野党共闘を呼び掛けてきた市民連合の事務局を担う芝田万奈さん(24)は静かに次の一手を考えていた。「落ち込んだりしている場合ではない。これはまたとない好機。できることをやる。それだけ」。2015年夏、安全保障関連法と闘った元SEALDs(シールズ)の創設メンバーは、歴史に刻まれるであろう政治の渦中にいた。


 〈社会運動に関心を持つようになったのは東日本大震災による東京電力福島第1原発事故。親類も被災し避難生活を送っていた〉

 当時は高校生で、心のどこかで大人や政治家がどうにかしてくれると思っていました。ところが全くどうにもならない。政治に対する不信感が生まれたのはそのときです。

 東北地方の多くの人が避難生活を送り、子どもを持つ母親たちが被ばくを心配し、行動を始めていました。そうした社会の変化に興味を抱き、大学では文化人類学を専攻し、社会運動を研究しました。

 国内の社会運動を調べる中で出合ったのがシールズの前身で「特定秘密保護法」に反対していたSASPL(サスプル)でした。14年10月、東京・渋谷で行われたデモに参加し、日本の社会運動へのイメージが変わりました。ダサくない。自らの言葉で語りかけるスピーチ。新しく、興味深かった。サスプル解散後の15年5月3日に立ち上がったシールズにも参加しました。

 集団的自衛権の行使容認と、それを運用するための安全保障関連法は、とても分かりにくかった。米国の戦争に巻き込まれていこうとする法律で、戦後70年、日本がやってこなかったことができるようになる。知るほどに危機感が募りました。だが、難解で違憲性が指摘されるこの法律をどうすれば分かりやすく多くの人に伝えられるか。そこが重要だと思いました。

 パンフレットや動画を作り、デモを主催し、毎週のように国会前で抗議の声を上げられるようにしました。裏方としてできることはやり切った。社会運動は盛んになり、市民も社会もそれなりに変わった。


SEALDsが国会前で行った抗議行動でマイクを握る慶応大の小林節名誉教授(中央)と傘を差し出す芝田さん(左)=2015年6月5日夜
SEALDsが国会前で行った抗議行動でマイクを握る慶応大の小林節名誉教授(中央)と傘を差し出す芝田さん(左)=2015年6月5日夜

 ですが、安保法制を止められなかった。政治の結果を変えることはできなかった。唯一、そこに悔しさを感じました。

民主主義を育む


 〈政治を変えるには選挙で勝たなければならない。野党共闘を呼び掛ける市民連合の発足に関わり、16年4月の衆院北海道5区の補欠選挙、そして同7月の参院選でも統一候補の擁立や街宣準備に奔走した〉

 1人でも多く、自分たちの声を代弁してくれる議員を国会に送る。そのためにどうするか。選挙は結果が明白です。もちろん勝つ気で全力を尽くすわけですが、負けても次につなげられるかが重要です。

 2年余り行動してきて感じるのは、これこそが民主主義を育むことではないか、ということ。

 16年7月の参院選後、各地方で「市民連合」や「市民の会」が発足しました。無党派の市民が民進党や共産党、自由党、社民党の立候補予定者と関係性を築き、ネットワークが格段に広がった。これは決して無駄になっていません。

 大切なのは「選挙が始まってから」ではなく、「その選挙の前に何をしておくか」です。いま「野党は情けない」と嘆いている人もいるでしょう。私も「絶望的ではないか」とたまに思うことがある。

 だがそこで立ち止まってはいけない。15年夏の悔しさを超え、「安倍やめろ」の声が上がり、そして巡ってきたチャンスです。この解散には多くの人が納得していない。後は築いてきたものをどう生かし、どう選挙戦を組み立てるかです。市民連合としても、新しく立ち上がった立憲民主党に、野党間協力を要請しました。

政治家の国民離れ


 いまの政治の何が問題か。それはアンフェア(不公正)だということです。

 安保法制が日本にとって必要だと心の底から思っているなら、安倍首相はどんなに時間をかけようとも徹底的に説明を尽くすべきでした。現実は世論調査で反対が7割を超え、国会前で数千、数万人が抗議集会を繰り返した。にもかかわらず強行採決しました。この国は立憲民主主義国家です。憲法のルールにのっとって国家を運営し、決めるのが大前提です。安倍首相はその国民との約束さえ守ろうとしない。


安全保障関連法が強行採決された直後の国会正門前=2015年9月19日午前2時20分ごろ
安全保障関連法が強行採決された直後の国会正門前=2015年9月19日午前2時20分ごろ

 「共謀罪法」もそうでした。論点をすり替え「テロ対策だ」とうそをつく。真摯(しんし)な姿勢がまるでない。こうした国民をばかにした政治を続けることで、政治に無関心な人が増えるのは当然です。意図して国民には無関心でいて欲しいと思っていたり、関心を持ってもらうこと自体を諦めていたりする。

 起きている現象は「国民の政治離れ」ではなく「政治家の国民離れ」です。このアンフェアな政治がまかり通ることに悔しさを感じます。これは右、左、与野党関係なく政治全体に通底している。そして無関心を「国民のせいだ」「若者のせいだ」と言い出す。

 では政治家に問いたい。「あなた方は国民ときちんと向き合おうとしていますか」「おかしいことに対して闘おうとしていますか」

だから行動する


 〈好きな言葉がある。思想家の佐々木中(あたる)さんによる「この熾(し)烈(れつ)なる無力を」(河出書房新社)の中にある一節。「無力だ。けれども、無駄ではないんだ。無力だけれども、無意味ではない」〉

 3・11以降、私自身が無力感のようなものを感じてきました。ところがシールズの活動を通じて「無力かもしれないが無駄ではない。いや実は仲間と力を合わせれば無力ですらないかもしれない」と思えるようになりました。

 一つ一つの直近の選挙で結果を出すのは難しい。でも必ず次につながる。

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