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季(とき)めく暮らし 行事研究家、文筆家
【月を仰ぐ】

カルチャー 神奈川新聞  2019年09月27日 16:24


仰ぐ、川や海、田んぼに映して見る。月をめでる方法もいろいろ。

【2019年9月22日紙面掲載】

 今回も引き続き、月の話題です。

 十五夜も過ぎましたが、そこから約1カ月後の10月11日には十三夜がやってきます。

 月に見とれて立ち止まり、ほうっと一息。そんな季節が続きます。

 空に浮かぶ美しい月を見つけた時のうれしさはもちろんのこと、眺める時にする「空を仰ぐ」という動きがまたよいのです。

 スマホや本、そして新聞を読むのに前に倒してばかりの首を後ろへ伸ばし、天を仰げばいい首のストレッチになります。

 また、いい月だなあ、と仰ぐうちに胸の奥が広がるような感覚があります。そうかと思うと大切な誰かを思い出したりふいに楽しかった思い出がよみがえったり。月は内面に働きかけるような力があります。

 そもそもこの「仰ぐ」ということばには「敬う」「尊敬する」など、動きだけでなく気持ちの意味があることも興味深いところ。

 「拾遺和歌集」など、いにしえの人の歌をたどっていくと、やはり月を眺めては強く心を揺さぶられていたことが伝わってきます。

  手に結ぶ 水に宿れる月影の あるかなきかの 世にこそありけれ

 紀貫之の辞世の句ですが、「手ですくう水に映った月のように、あるかないかのはかない世であったなあ」という歌。

 この歌に出合ってからというもの、「手ですくった水に月を映す」、これを試してみたいとずっと考えています。


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