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神奈川新聞と戦争
(106)1941年 ワインはもう不要?

神奈川新聞と戦争 神奈川新聞  2019年09月23日 18:00

「鍛錬結構だが過労御用心」とある赤玉ポートワインの広告=1941年8月5日付神奈川県新聞
「鍛錬結構だが過労御用心」とある赤玉ポートワインの広告=1941年8月5日付神奈川県新聞

 神奈川県新聞(本紙の前身)に掲載された寿屋(後のサントリー)の赤玉ポートワインの広告は、戦時体制下の1941年7月以降、銃後に戦争協力を求める内容に一変した。

 例えば8月には、これまで取り上げた「何軒あらうと ひと世帯」をはじめ6種類の広告が3回ずつ、計18本、出稿された。

 ほかに▽猛暑への注意を喚起した「鍛錬結構だが過労御用心」▽食料節約を訴えた「毎日の生活にもつと計画性を持たせたい」▽家庭や職場での戦争協力を促した「君も鎖の一環だ!」▽食糧難でも栄養豊富な料理を作るよう主婦に求めた「お料理の設計」▽前線の将士に送る慰問袋を督励した「前線の慰問に倦怠(けんたい)の埃(ほこり)を溜(た)める勿(なか)れ」。

 特に「梅雨が上る。灼熱(しゃくねつ)の夏が来る」で始まる「鍛錬結構だが過労御用心」の本文は興味深い。

 「炎暑が何だ、鍛へろ、頑張れとばかり、威勢のいゝのは頼もしいが、それも束(つか)の間、そろゝ落伍(らくご)者が出て来る」。猛暑で無理して「ヘトゝ」になるのは軽率だと戒めるのだ。「絶えざる努力を以(もっ)て一歩々々向上を計る、これが鉄則だ」。体の鍛錬は徐々に進めなければ、かえって体を壊す。もっともだが、その目的はあくまで戦争や軍需産業での労働にある。

 2カ月ほど前ならば、統制下ながらも商品名を大きく掲げ、嗜好(しこう)品だったワインを疲労回復の「薬用」へと、コペルニクス的転回ばりの用途の変更で購買欲を刺激した。だが「鍛錬結構-」の広告には、過労対策にワインを飲めとは、一言も書いていない。


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