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日本将棋連盟指導棋士五段、本紙将棋担当記者
将棋のはなし(125)女流棋士と奨励会

カルチャー 神奈川新聞  2019年09月20日 19:39


【2019年9月16日紙面掲載】

 1993年の奨励会試験は大きな話題になった。私がぎりぎりの成績で最下級の6級に合格したからではない。女性3人同時入会という空前の出来事があったからだ。

 当時、女性は女流棋士として活動しながら奨励会に在籍することができた。というより、そんな例が少な過ぎてルールが整備されていなかったという方が正しいだろう。

 女流棋士になるタイミングはそれぞれだったが、3人は二足のわらじを履いて戦った。プロとして華やかな舞台でスポットライトを浴びる一方、修業中の身でもある。

 例えば大規模な将棋大会には、彼女たちも手伝いに出向く。そんな時にファンからサインを求められ、「今日は奨励会員として来ていますので」と断る姿をよく見た。男には分からない苦労も多かっただろうと思う。

 その一人である矢内理絵子さんは高校時代、奨励会では苦戦していたが、女流棋戦で目覚ましい活躍を見せた。そうなると自然な流れとして、女流棋士枠で一般棋戦の出場権を手にする。これが矛盾を生んだ。

 奨励会を卒業してプロ棋士「四段」にならないと出られない公式戦に、級位者が参加するという事態になってしまったのだ。奨励会と女流棋士、二つの立場が交ざっておかしくなったのである。

 以降、女流棋士と奨励会に関する規定は少しずつ整備されてきているが、まだまだ過渡期だと感じる部分も多い。当事者の負担が少ない形でまとまってほしいと願う。


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