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どうなる介護福祉士待遇改善 10月から新加算スタート

社会 神奈川新聞  2019年09月17日 05:00

介護イメージ
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 介護福祉士らの待遇改善を図る介護保険制度の「特定処遇改善加算」が10月に創設される。消費税増税分などを原資(公費約1000億円)に「勤続10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行う」とのキャッチフレーズで始まった改革だ。しかし、決まった制度は、介護福祉士以外の職員も対象にできるなど極めて柔軟で「事業所丸投げ」とも指摘される。事業所の中には「加算分の多くは介護福祉士以外の介護職員の待遇改善に充てる」「待遇改善ゼロの介護福祉士もいる」との声もあり、配分方法は千差万別だ。期待を裏切られたと感じるベテラン介護福祉士も多く出そうだ。 

千差万別の様相に 配分方法は事業所次第

 同加算は現在、条件を満たし加算を付けたいという事業所の届け出が終了し、県などで書類の精査が進められている。当初のキャッチフレーズからすれば、勤続10年以上の介護福祉士に一律、月8万円渡すというのがもっとも単純な方法だ。しかし、それでは、事業所内でのバランス、人事評価・賃金体系との関係で問題も生じる。そこで決着したのが、一定条件を満たした事業所の介護報酬に一定の比率で上乗せする「加算」という仕組みだ。ただし、その比率は、各事業所のベテラン介護福祉士の数によるのではなく、訪問介護、通所介護などサービス区分ごとに設定した。

 加算額の配分は、各事業所で「月8万円以上の待遇改善」または「年収440万円以上」の介護福祉士を1人設定すれば(例外規定もあり)、一定のルールの下、かなり自由に配分できる。10年の基準も緩和した。

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 その結果、個々の介護福祉士の待遇改善は事業所の判断次第に。また、介護報酬が少ないため加算額も少ない小規模事業所で働く介護福祉士や、人材育成が進んで介護福祉士が比較的多い事業所で働く介護福祉士が不利になる不公平も生じた。十分な配分が不可能な事業所からは「職員の事業所不信を招きかねない」と怒りの声も上がる。


 横浜市内のある訪問介護事業所は、職員25人のうち15人が介護福祉士で、その11人が勤続10年以上だ。ヘルパー2級(初任者研修)が9人、事務1人。ところが、見込まれる加算額は月約20万円に過ぎない。管理者は「役職者で勤続10年以上の介護福祉士1人の年収を440万円以上にしたら、他の介護福祉士に配分できる残額はわずか。冬と年度末のボーナスでまとめて払う」と語る。職員の理解を求め説明に努めるという。

 同市内で職員約80人(介護護福祉士約20人、ヘルパー2級約60人)を擁する訪問介護事業所の管理者は、経営面からヘルパーの確保を最優先にせざるを得ないという。「今回の加算分の多くはヘルパーの時給アップの原資にする」と話した。

 一方、看護師、リハビリ職ら多職種が働く介護老人保健施設(老健)は、訪問介護などに比べ加算率は低いが、規模が大きく一定の加算額が得られる。ある老健(職員約70人)は月約50万円の加算額を見込む。「440万円以上」条件はクリアしているため、約20人の介護福祉士に対し、人事評価に従い月約6万円~約5千円の待遇改善を行うという。管理者は「介護福祉士が専門職として評価され、それに見合った報酬を得られることは良かった」と話した。

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 加算を届け出ると、その分、利用料金も上がるため、利用者離れを懸念する事業所もある。加算率が低く、小規模が多い地域密着型通所介護の中には「加算額はわずかなのに、事務作業が増え、値上げを利用者に説明しなければならない。10月は見送る」という事業所もあった。

 県介護福祉士会のコッシュ石井美千代会長は「当初言われていた待遇改善と懸け離れた形になり驚いている。残念な思いをする介護福祉士が多く出て来ることを懸念している。今後、県内の介護福祉士の声をまとめていきたい」と話す。介護を支える国家資格である介護福祉士が、社会的に正当な評価、待遇を受けられるため、取り組みを進めていくという。


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