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紙片に見る世相と時代 横浜都市発展記念館・企画展 

カルチャー 神奈川新聞  2019年09月12日 12:26

 カラフルな鉄道の記念乗車券を通して世相や街の変遷を見詰める企画展「一枚の切符から昭和のあの頃へ」が、横浜市中区日本大通の横浜都市発展記念館(みなとみらい線日本大通り駅隣接)で23日まで開かれている。交通を深く研究する同館らしい、全国でも珍しいテーマだ。

 手のひらに収まるほどの小さな紙片ながら、刻印された文字や絵、写真からは時代の雰囲気が読み取れる。横浜、神奈川を中心に約300点が集められた。

■戦前は軍関係

 黎明(れいめい)期の記念切符は、戦前とあって皇室、軍、博覧会にまつわるものが多い。路面電車で国内最古級とされるのが1915年の「大典紀念乗車券」だ。横浜市電の前身である私鉄の横浜電気鉄道が、大正天皇の即位を祝って発行した。33年の「皇太子殿下御降誕奉祝記念乗車券」は、現在の上皇さまの誕生記念だ。

 欠かせないのが関東大震災(23年)に関するもの。復興事業の完了を記念した市電の乗車券には、灯台やビル街などよみがえった横浜が描かれた。一方で戦争の時代ゆえ、旭日旗が描かれた「大演習特別観艦式市電優待乗車券」(33年)や「紀元二千六百年奉祝電車記念乗車券」(40年)など国家主義的なものもある。

■大衆化を反映

 戦後の占領期、記念切符はいち早く復活した。49年に横浜で開催された日本貿易博覧会に合わせ市交通局が発売した記念切符には英文も併記された。54年の開国100年、58年の横浜開港100年など同局は記念切符を次々に発行。港町らしく客船をあしらうなどデザインは洗練され、印刷も色鮮やかになった。

 高度成長期以降、記念切符は定番の存在に。鉄道の新線開通など節目ごとに国鉄、私鉄の各社から発行された。背景には旅行の大衆化や都市基盤の整備、五輪や万博などの国家的イベントの相次ぐ開催などがあるという。印刷技術が向上し、カラー写真を用いた切符も目立つようになった。

■趣味人の功績

 展示資料の多くは、歯科医で戦前からの鉄道趣味人として知られた故長谷川弘和のコレクションだ。今は同館が所蔵している。ざら紙に印刷された戦前戦中の市電の乗換券や、旧字体で印字された定期券は、辛くも戦火をくぐり抜けた。

 戦後も旺盛に収集活動に力を注いだことは、会場入り口近くに展示された長谷川の封筒で分かる。全国の駅に現金書留で代金と返信用封筒を送っては、記念切符を求めていたのだ。
 一趣味人の地道な、そして手間とお金のかかる活動が、今や時代を映す貴重な資料に-。そんな時間の厚みも感じられる。

 午前9時半~午後5時、14日は同7時。月曜休館、祝日の場合は翌日休館。料金は一般300円。売店では、昔の切符を模したグッズも販売している。問い合わせは同館☎045(663)2424。


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