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神奈川新聞と戦争
(102)1941年 これでも商品広告?

神奈川新聞と戦争 神奈川新聞  2019年08月25日 05:00

「疲れを溜めるな」の文句とともに「赤玉ポートワイン」の商品名も大きく記された1941年6月27日の広告
「疲れを溜めるな」の文句とともに「赤玉ポートワイン」の商品名も大きく記された1941年6月27日の広告

 「疲れを溜(た)めるな」。ワインは健康飲料だとPRした戦時下の寿屋(後のサントリー)の広告である。1941年6月27日、本紙の前身の神奈川県新聞に掲載された。熊手のイラストをあしらい、次のような文章をつづった。

 「家の内外の掃除でも、手を抜くとすぐ塵埃(じんあい)が溜ると同様、人の身体も手入れを怠つたが最後疲労といふ埃(ほこり)が積り積つて、思ひもよらない病気や災ひを招き易(やす)い」

 だからワインを飲み健康に-。健康体で軍需産業や農業などの増産に貢献すべし、との国策に沿ったメッセージだ。

 だが、あくまで広告は広告。「疲れを-」と同じ大きさのゴシック体で「赤玉ポートワイン」と、確かに商品名が記されている。


「赤玉ポートワイン本舗 株式会社 寿屋」の文字が左下に小さくあるだけの7月7日の広告
「赤玉ポートワイン本舗 株式会社 寿屋」の文字が左下に小さくあるだけの7月7日の広告

 それが一変したのが、わずか10日後、7月7日。タイトルは「健康の為(ため)だ! 歩け! 正しく強く」、本文は小さな文字で15行に及んだ。「陽(ひ)を浴びて歩く…これ程易しくて男も女も大人も子供も誰も彼もが出来る健康法が他にあるでせうか!」「日本人として恥しくない様、胸を張り、腰を伸ばし、膝を伸ばし大きく前後に腕を振つて、強く正しく闊歩(かっぽ)するのです」

 もはやワインさえ必要ない。歩けば「生々と気分がはずみ(略)次第に健康に近づく」というのだ。それまで自社のワインを飲めば健康になれる、と訴え続けた広告の大転換である。

 何より大きな変化は「赤玉ポートワイン」の商品名と社名の文字が極小になったことだ。本文よりも一層小さい。これで広告といえるのだろうか?


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