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神奈川新聞と戦争
(101)1941年 「増産に貢献」の建前

神奈川新聞と戦争 神奈川新聞  2019年08月18日 05:00

働くためにワインで健康維持を、と訴えた1941年6月22日の赤玉ポートワインの広告
働くためにワインで健康維持を、と訴えた1941年6月22日の赤玉ポートワインの広告

 「切り子のショットグラスで母と祖母が毎晩、ワインを飲んでいたのを思い出しました」。読者から寄せられた、戦後の1947~50年ごろの回想だ。茶だんすにしまってあった瓶こそ、赤玉ポートワインだった。二人の好みは日本酒で、ワインは「薬用酒のつもりだったのでしょう」。

 これも寿屋(後のサントリー)の新聞広告がもたらした結果の一つだろう。40~41年ごろ、同社は同ワインが戦時体制下の健康に資するとうたい、広告を通じて“服用”を勧めた。

 41年6月22日の神奈川県新聞(本紙の前身)には、健康的な男性が汗をかき笑うイラストをあしらった広告がある。「元気で立働く楽しさ!」の惹句(じゃっく)。宣伝文は次のごとくだった。

 「機械の調子も素晴らしい。腕の調子に至つては、これはまた滅法(めっぽう)無類、いくつ拵(こしら)へても、一分の狂ひも見せない冴(さ)え方。面白いやうに能率が上る。喜しいことにこんな時には額に玉なす汗までが快い」

 快さの源は体の健康。そして「疲れ知らずの健康体」をつくるためには、ワインが欠かせない-。そんなことを「働く人よ!」と呼び掛けるのだった。


同24日の広告は食料難を背景に、野菜の「皮にも葉にも立派な栄養がある」と唱えた
同24日の広告は食料難を背景に、野菜の「皮にも葉にも立派な栄養がある」と唱えた

 同24日には茶わんの絵とともに「食事の要領!」の文句の下に太字で「好き嫌ひ言はず」「よく噛(か)んで」「無駄なく」と配し、これまで通り、偏食の防止や消化吸収の促進、十分な栄養補給の意義を説いた。

 一見すると健康指南のようだが、宣伝文に野菜の「皮にも葉にも立派な栄養がある。捨てずに食べて下さい」とあるあたりに、食料事情もうかがえる。当時既に、国民には節米や代用食が求められていた。

 同27日には、おなじみの「疲れを溜(た)めるな」の文句に熊手の絵。掃除に例え、疲労を蓄積しないよう注意し、健康のために同ワインの服用を勧めるのだった。

 ここまで紹介した広告は、軍需品や食糧の増産に貢献し、国策に沿うとの建前を強調しながらも、その主眼はあくまで自社製品を消費者に買ってもらうことだった。だが10日後、それが一変する。


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