1. ホーム
  2. カルチャー
  3. 今までの音楽人生表現 前橋汀子・バッハ無伴奏

今までの音楽人生表現 前橋汀子・バッハ無伴奏

カルチャー 神奈川新聞  2019年08月17日 07:00

1961年8月、17歳の前橋はソ連留学のため横浜港から旅立った。「横浜は私にとっての出発点です」(撮影・花輪久)
1961年8月、17歳の前橋はソ連留学のため横浜港から旅立った。「横浜は私にとっての出発点です」(撮影・花輪久)

 2017年に演奏活動55周年を迎えたバイオリニストの前橋汀子が25日、横浜みなとみらいホール(横浜市西区)でバッハの無伴奏ソナタ&パルティータ全曲演奏に挑む。バイオリンのあらゆる奏法が網羅されており、高度な技術が要求されることから「バイオリニストのバイブル」とも言われる同作品。「全曲を演奏するのは最後のチャンスかもしれない」と語る前橋に、バッハへの思いを聞いた。

 バッハの曲は「ステージで弾く予定がなくても、常に譜面台にあって練習することも多い、身近な存在」という前橋。「多くの作曲家の中でも、広く大きい世界観を感じる。バッハの音楽を通じて、今まで自分の人生や音楽体験を表現できたらうれしい」と意気込みを語る。

 無伴奏ソナタ&パルティータ全曲は1989年にCDを発表、大きな評価を得たが、21日には改めて録音を行ったCDが発売される。「2014年からカルテットに本格的に取り組むようになり、譜面の見方や弾き方が自分の中で変化した。バッハの時代のバロック奏法を学んだこともあり、改めてもう一度、この作品に取り組みたいという気持ちになった」と、再挑戦のきっかけを語る。

 前橋の師でもあるヨーゼフ・シゲティや、ナタン・ミルシテインなど多くの巨匠が録音を残している同作品。どのように自分らしさを表現するのか。「音源を聴くと、それぞれの弾き手の人物像が見えてくる気がする。自分もここまで演奏活動を続けられたからこそ曲の中で自然ににじみ出てくるものがあると思う」

 演奏会では、休憩を挟むとはいえ、2時間強をたったひとりで演奏する。「健康に恵まれたからできること」と笑うが「お客さまにはあっという間だったと思ってもらえるような演奏にしたい」と意欲を見せる。「4人で演奏するカルテットを1人で表現するような力量が求められる難しい曲。でも1人だからこそ自由に構築できる部分もあり、弾きがいがあると言えるかもしれません」

 使用する楽器は1736年製作のデル・ジェス・ガルネリウス。欧州の貴族の館で約100年もの間、使われずに保管されていたものだ。15年前にロンドンの楽器店で出会い、それまで保有していた2台のバイオリンを手放して入手した。「1世紀もの間、誰のものでもなかった奇跡的な楽器。生命力にあふれていて、新しい創造力やエネルギーを与えられた」というバイオリンの音色を堪能できる機会ともなる。

 「今後もできる限りバッハに向き合っていきたい」と語る前橋だが、ソロだけでなく、カルテットでの演奏活動も積極的に展開していくという。「いろいろな角度から、バイオリンの魅力を伝えられるコンサートが好き。一日でも長くステージでバイオリンを弾いていけたら」


前橋汀子チラシ
前橋汀子チラシ

前橋汀子のバッハ無伴奏 公演概要

 午後1時開演。S席3800円ほか。チケットは神奈川芸術協会☎045(453)5080。


シェアする