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厚木基地物語
過密地の軍事基地(5)訓練移転、動く自治体外交

社会 神奈川新聞  2019年08月16日 17:41

 厚木基地で実施されていた空母艦載機によるNLP(夜間離着陸訓練)を巡る騒音問題の膠着(こうちゃく)状態が続く中、地元から出てきたのが、1200キロ離れた小笠原諸島の硫黄島を訓練に活用する案だった。

 構想は70年代にも大和市が国に提案していたが、米軍に「遠すぎる」との理由で退けられていた経緯がある。

 87年6月の市議会定例会本会議で一般質問に立った市議、宇津木朋子は、NLP問題を取り上げ「(移転先に)硫黄島が再浮上するのではないか」と問いかけた。「すべての見通しが厳しくなる中、わらにもすがりたい思いがあった」。宇津木は振り返る。

 「参考にする」。宇津木の質問にこう答弁した市長の井上孝俊は、厚木基地を訪れ、司令官に硫黄島案の検討を要請する。12月の市議会で、井上は「米軍も検討中だという」と報告した。

 英語は不得手。ゴルフもやらない。井上の息子、貴雄の目には、父は「米軍幹部と人間同士の関係一本で渡り合っていた」と映った。


硫黄島の滑走路で離着陸訓練を繰り返す米空母艦載機の戦闘攻撃機FA18ホーネット=2013年
硫黄島の滑走路で離着陸訓練を繰り返す米空母艦載機の戦闘攻撃機FA18ホーネット=2013年

 翌1988年2月、井上の意を受けた地元企業の幹部が、厚木基地で旧知だった米軍幹部と米ハワイで会合し、空母艦載機による夜間離着陸訓練(NLP)を硫黄島に移転させる構想の感触を探った。

 日米の政治問題に発展していた航空機騒音問題の膠着状態を打開させたい熱願を共有した米軍と地元の“歯車”がかみ合い、「硫黄島活用」に向けた自治体外交が動きだしていく。

 そして、米国から奉仕団体のメンバーが大和市役所を訪れた。市長との面会を終え、エレベーターに乗り込んでいく姿が、当時市議だった土屋侯保の目に留まった。

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