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平和つなぐ 戦後74年の夏
横浜大空襲の体験 次代へ 若手俳優ら朗読劇熱演

社会 神奈川新聞  2019年08月14日 12:17

セーラー服にもんぺ姿で熱演する伊藤はるかさん。右は大和田悠太さん =磯子区民文化センター杉田劇場
セーラー服にもんぺ姿で熱演する伊藤はるかさん。右は大和田悠太さん =磯子区民文化センター杉田劇場

 戦時下の横浜を描いた朗読劇「真昼の夕焼け」に、劇団「横浜夢座」の若手俳優が臨んでいる。「お前たちは戦争をするなよ、と子どもたちに伝わるものがあれば、満足」。継承へのメッセージをそう書き残した原作者の思いを受け継ぐ若き役者たち。自身も、そして鑑賞する子どもたちも、ともに戦禍を知らないからこそ想像力をよりどころとし、戦争の凄惨(せいさん)と平和の尊さを伝える。

 舞台は横浜中心部が焦土と化した1945年5月29日の横浜大空襲。15歳の少年「健二」は焼夷(しょうい)弾が降り注ぐ中、偶然出会った少女とともに死体の山をかき分けながら逃げ惑う。互いの名前や年齢も知らないままの2人だったが、少女は突如、安否不明の母親を捜すため健二に別れを告げ、真昼にもかかわらず黒煙の闇が広がる街に姿を消す。健二には闇の向こうに真っ赤な火炎が燃える様子が、血のような夕焼けに見えた-。

 横浜ゆかりの詩人の故・筧(かけい)槙二さん=享年(77)=が横浜大空襲の体験を基に描いた同名の短編小説を、横浜夢座がオリジナルの朗読劇にしたものだ。効果音などの生演奏や照明効果を加え、横浜市内の小中学生向けに上演してきた。

 健二役の大和田悠太さん(37)は舞台に立つ日の朝は空を見上げ、焼夷弾が雨のように落ちる音を想像する。「ここに爆撃機がやってきて、突然、爆弾を落としたらどんな思いがするだろうか」。今の時代、健二と同じ体験を自分がしたらどうなるかと思い描きながら芝居に向き合う。

 「自分たちが戦争を明確にイメージすることで、朗読劇を鑑賞する子どもたちも戦争を想像してくれるようになるはず」。朗読劇を見たという女の子から「(想像し、その場にいたかのように)体験できてよかった」という感想があったといい、「この朗読劇を続けていく意義はこれなんだと思った」と力を込める。

 少女役で主演する伊藤はるかさん(30)も想像力を意識する。出演者の中で唯一、セーラー服にもんぺ姿で舞台に立つ。

 戦時中は思うように学校で勉強することができず、食べ物も乏しく、スカートすらはけなかった。もんぺ姿は「戦争はこういう時代だったのよ、と子どもたちがより想像しやすくするため」に考えた仕掛けだ。

 伊藤さんは小学生の時に祖父母から戦争体験を聞いてきた。「今の小学生は、おじいちゃん、おばあちゃんも戦争を経験していない世代がほとんど。子どもたちが戦争を感じる機会がないのであれば、私たちが戦争を伝える場をつくりたい」と意気込む。

 原作者の筧さんは「われわれの世代がいなくなったらみんな忘れ去られる事柄だなという思いがあった」と胸の内を記していた。原作の短編小説を読み込んで舞台に上がっている大和田さんや伊藤さんは、戦争を忘却させないために朗読劇をライフワークにするつもりだ。筧さんから直接小説を託された座長で俳優の五大路子さん(66)は目を細めながら見守る。

 子どもたちからは毎年、「想像すると怖かった」などと感想が寄せられ、大和田さんは改めて心に刻む。「想像であったとしても戦争を体験してもらえる場所は貴重。これからもやり続けていかなければならない」


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