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夢の警官、36歳で一歩 県警採用引き上げの好機生かす

社会 神奈川新聞  2019年08月13日 05:00

 36歳の“新米”警察官が今夏、川崎署に配属された。学生時代から憧れながら、何度も採用試験の壁にはね返され、あきらめかけた警察官の道。県警が2018年度から採用試験の受験資格を35歳に引き上げたことで巡ってきたラストチャンスを生かし、神奈川を代表する門前町で、念願の警察官人生をスタートさせた。

「あきらめずに挑戦を」
川崎署大師駅前交番 児矢野巡査


「あきらめずに頑張ってきてよかった。神奈川の治安確保で恩返ししたい」と決意を新たにする児矢野巡査=川崎署大師駅前交番
「あきらめずに頑張ってきてよかった。神奈川の治安確保で恩返ししたい」と決意を新たにする児矢野巡査=川崎署大師駅前交番

 7月末、名刹(めいさつ)・川崎大師平間寺の門前町を管轄する川崎署大師駅前交番(川崎市川崎区)で初勤務に就いたのは児矢野竜大巡査。深夜、酔客の対応に苦慮したタクシー運転手からの通報で現場に急行。客は目を覚まして運賃も支払い、事なきを得た。念のため客の帰宅まで見届けて取り扱いを完了。翌朝、先輩警察官の指導を仰ぎながら乗り切った緊張の初勤務を振り返り「無事終えることができてよかった」と息をついた。

 埼玉県出身。テレビの密着番組で、何げない職務質問から事件の端緒を鋭敏につかみ、摘発まで結びつける警察官の姿に魅了された。埼玉県警の採用試験に挑戦を続けたが、合格できず、いつしか受験資格年齢の上限を超えた。地元でバス運転手などとして働いたが、両親や妻には「警察官になりたい」との熱意を伝え続けていた。

 そんな中、神奈川県警が18年度試験から受験資格年齢を従来の30歳から35歳に引き上げたことを知った。受験者の減少に歯止めをかけるとともに、社会経験豊かな人材の確保が目的だった。

 「これが最後のチャンス」-。縁もゆかりもない神奈川で夢の実現にまい進しようと誓った。長女沙和ちゃんを授かったばかりだったが、「警察官への強い思いは分かっていた」という妻志帆さんも「悔いを残さぬよう、頑張って」と背中を押した。

 昨春実施の採用試験を35歳で突破。妻と幼い娘を埼玉に残し、昨年10月に県警察学校(横浜市栄区)に入校、一回り以上若い同期生と寝食を共にしながら警察官としての基礎を養うべく鍛錬を積み重ねた。

 今年7月26日に行われた卒業式では両親や祖母、志帆さん、1歳5カ月になった沙和ちゃんが見守る中、卒業証書と努力賞を受け取った。「年の離れた自分を温かく迎えてくれた同期や教職員、何より入校中、手のかかる娘の面倒を見てくれた妻の支えがあったからこそ」。感謝の言葉が口を突いて出た。勇姿を焼き付けた志帆さんも「初めて見た制服姿は格好良かった。みんなが安心して、頼もしいと思える警察官になってほしい」と期待した。

 県警警務部によると、受験資格年齢の引き上げもあって、18年度試験の受験者数は6年ぶりに増加。採用センターは「31歳以上の合格者はさまざまな社会経験を積んでおり、リーダーシップやコミュニケーション能力が高いと、現場から報告を受けている」と手応えを感じ取る。

 児矢野巡査の新生活は公舎で妻、娘と3人暮らし。一人前の警察官になるまでの道は平たんでないが、「川崎大師のお膝元で地域の人に親しまれ、娘に誇れるような安全な町づくりに貢献したい」。そして続けた。「どんな分野でも夢を持ち続ければチャンスは巡ってくる。臆せず挑戦してつかみ取ってほしい」


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