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時代の正体 表現の自由考
「中止」もうやめよう 触れて、見て、自ら考えて

時代の正体 神奈川新聞  2019年08月07日 11:58

記者の視点=報道部・柏尾 安希子】「だから私たちがいま、ここにいる。たくさんの日本人と会って、会話し、議論するために」

 日韓関係が悪化しているいま、何をすべきか。問うと、韓国人彫刻家のキム・ウンソンさんは穏やかにこう言った。傍らでほほ笑む同じく彫刻家で妻のキム・ソギョンさんも続けた。「少女像を直接見てもらって、出会いながら話をしたい。市民はお互いに手を取り合うことが重要だ」

 「あいちトリエンナーレ2019」開幕直前の7月30日、慰安婦問題のシンボルでもある「平和の少女像」を制作し、「表現の不自由展・その後」に出展したキム夫妻に名古屋市の会場近くで取材した。政治的緊張が続く中で何を考えるのか。作品に込めた思いとともにぜひ聞いてみたかったからだった。

 政治家やメディアは両国関係の危機をあおり立てているかもしれない。だが市民はまず直接触れ合い、自分の目で見て、自分の頭で考えることが必要だ-。夫妻は1時間を超えるインタビューでこう訴えた。

 全くその通りだ。今だからこそ、伝えるべき言葉だと強く思った。

 夫妻は少女像について「決して『反日』ではない。伝えたいのは二度と同じ過ちを繰り返さないという決意、約束だ」と力を込めた。より多くの人にその思いが届くことを願った。

 不自由展は10月14日まで75日間の予定だったが、わずか3日でつぶされた。日本の人々が少女像に触れ、自ら考える機会も強制的に絶たれた。

 今回の不自由展は、15年に開かれた「表現の不自由展・消されたものたち」を鑑賞したトリエンナーレ芸術監督の津田大介さんが「ぜひ『その後』を開催したい」と不自由展実行委員会に呼び掛け、実現した。

 当時の不自由展は、有志の実行委によって都内の小さなギャラリーで開かれた。それが今回は行政が後押しし、より公共性が高いトリエンナーレという舞台で復活する。しかも行政が排除した作品も含まれる。15年に取材し、直球で問題を問う姿勢に感動した私は、今回の開催には正直驚いた。「よくぞ決断した」という気持ちもこみ上げた。

 だが30日に現地で取材すると、ことはそう簡単ではなさそうだと感じた。激しい批判が懸念され、開催すると案の定、殺到した。

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