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横浜銀行が「シーフード」にこだわる、深いワケ

神奈川新聞  2019年09月02日 00:00

サステナブル・シーフードを使ったメニュー開発会議の様子=横浜市西区の横浜銀行

 コンコルディア・フィナンシャルグループが、持続可能な漁業で捕れた水産物「サステナブル・シーフード」を傘下の横浜銀行の社員食堂で採り入れようと、国内の銀行では初となる取り組みを本格化させています。

 直訳すると「持続可能な水産物」を意味する活動は、乱獲や環境破壊につながる養殖法によらずに流通させた水産物を利用し、未来の海と水産資源を守っていこうというものです。食堂運営を委託する総合フードサービス企業のグリーンハウスと組んで月1回ほど提供し、持続可能な開発目標(SDGs)の実現につなげていこうという試みです。

国内の漁獲高は30年で三分の一に


試食会の前にはグリーンハウスの米今さん(中央)や調理担当者から、この料理ができるまでの「ストーリー」が丁寧に語られた

 8月初旬。横浜銀行本店の社員食堂で「開発会議」が行われていました。スーツを着込んだ大人たちが議題にしていたのは、投資でも融資でもなく「魚介類を使った料理」でした。

 説明をするのは、横浜銀行が社食の運営を委託する「グリーンハウス」の米今和也さんです。同社は豊かな海を次代へつないでいくサステナブル・シーフードの理念に共感し、導入に向けた手続きなどを請け負っています。

 横浜銀行を傘下とするコンコルディア・フィナンシャルグループは、2015年に国連が採択したSDGs(持続可能な開発目標)の達成を目指しています。

 これまでも本業である金融サービスや多様な企業活動を通じ、より便利で暮らしやすいまちづくりの支援、金融教育を含めた子どもの健全育成、環境良化などに努めてきました。食を通じた取り組みも検討する中で、横浜銀行の社食を委託するグリーンハウスのサステナブル・シーフードにまつわる活動に共鳴し、横浜銀行本店内の食堂でメニューを提供することを決定しました。


サステナブル・シーフードを使った5つの試作メニュー

 サステナブル・シーフードには2つの認証があります。一つは違法な漁業や乱獲などによらない方法で獲られた天然もの、もう一つは環境への影響を最小限に抑えられた養殖ものです。

 横浜銀行の担当者はこう話します。「今、日本の総漁獲高は30年前に比べて三分の一という現実があります。この限られた海の資源を次世代に残すにはどのような行動ができるのか、『自分ごと』として考えてもらいたい」  

 社食で採用する候補として並んだ料理はサバの塩焼き、タラのフリット、エビチリ、八宝菜など。

 さあ、ようやく実食です。

「負の遺産」を残したくない

 「サバ の塩焼きは、これだけだとちょっと見た目がさみしいですね。一緒に出す大根おろしを鬼おろしにできたら、ちょっと違って見えますよね」

 メニュー会議で人一倍、熱心に意見を出していたのが、俳優の水野真紀さんです。水野さんは調理師免許があるほどの腕前で、テレビで料理番組も持っています。

 横浜銀行のイメージキャラクターを20年以上務め、幅広い世代に愛される水野さんの視点を通じて、一人でも多くの人にこの活動を身近に感じてもらおうという思いがあります。

 家に帰れば一人の「母親」として台所を預かる水野さんは、やはりお値段も気になります。「サステナブル・シーフードは、少し高くなるんでしょうか」。米今さんが答えます。「社食での導入にも別の審査が必要で時間やコストがかかるほか、まだまだ業務用に使える魚種の数が限られています」。同じ魚でも2割程度は高くなることもあるといいます。


会議でも積極的に発言をする水野さん

 水野さんは現在、大学に通って教育関連を学んでいて、SDGsのイベントに自ら足を運ぶなど、環境問題にも強い関心を持っています。

 「これまで日本を含めた世界各国の経済成長や発展と引き替えに、環境汚染などを招いてきていますよね。私たちは未来の子どもたちにこれ以上、負の遺産を残してはいけない。だからこそサステナブル・シーフードの活動を広げていくことは、未来の環境を守ることにもつながるし、私たちが果たすべき責任でもあると思います」  

 その熱い言葉は、コンコルディア・フィナンシャルグループが目指す社会・地域貢献の方向性そのものです。

「余裕ある資源」は1割未満


ウナギをさばく職人。世界に流通するウナギのうち、6割を日本人が消費するという。

 例えば、私たちにとってなじみ深い「ニホンウナギ」は2014年に絶滅危惧種に指定され、サステナブル(持続可能)な魚ではなくなりつつあります。

 私たちが口にするウナギは、全てが天然物です。「養殖」と表示されているものも、全てが自然の稚魚(シラスウナギ)を獲って養殖池で育てたものだからです。シラスウナギは高値で取引されるために乱獲と密漁がやまず、資源が減り続け、採捕量は全盛期の20分の1にまで減っています。卵からの完全養殖も技術としては確立されていますが、まだまだ高コストで商業ベースに乗せられる段階ではありません。


会議での議論も白熱した

 このほかサバやイワシ、サンマ、マグロなど、私たちが日常的に口にする魚も、資源量を減らしています。国連食糧農業機関(FAO)が行った世界の水産資源の調査によると、2015年時点で「枯渇」が約3割を占め、次の段階の「限界まで利用」を加えると9割に達します。「余裕ある水産資源」は、全体の1割に満たないのです。

港町の銀行の思い

 会議と試食を終え、5つあったメニューは3つに絞られました。これを行内での休日セミナーで提供した上で、さらに社員食堂で展開していきます。

 横浜銀行の担当者は、思いをこう語ります。

 「これを機にSDGsがなぜ必要か、そして何から始めればいいか、従業員一人一人が自ら考え行動するきっかけになってほしい。SDGsの達成は難しいことではありません。一人一人の行動が世界を変える最初のアクションになるのだと思います」

 サステナブル・シーフードの認証を受けた水産物やそれを使ったおにぎりなどの加工品は、実は一部スーパーでも販売されています。

 「食品を買うときに、サステナブル・シーフードを選ぶこと」

 それがあなたにとっての一歩であり、コンコルディア・フィナンシャルグループの願いでもあります。

 さあ、次はいよいよ試食を兼ねたセミナーの開催です。行員の皆さんはどのような反応を見せるでしょうか? 「後編」は9月16日から公開予定です。

▶コンコルディア・フィナンシャルグループのSDGsの取り組みに関しては、こちらをご覧下さい。


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