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バリアフリーの海へ in Yuigahama(上)
「最高の時間くれた」

社会 神奈川新聞  2019年08月06日 18:00

体験会で、波乗りに成功した参加者に拍手を送るスタッフら=5月12日、由比ケ浜海岸
体験会で、波乗りに成功した参加者に拍手を送るスタッフら=5月12日、由比ケ浜海岸

 7月1日。海開きをした鎌倉市の由比ケ浜海岸に、県内初の「バリアフリービーチ」がオープンした。

 全19店の海の家と2カ所のトイレは木製ボードでつながれ、車椅子で行き来できる。土日・祝日は、監視所で待機するライフセーバーらが介助員として障害者の移動などを手伝う。

 式典に、地元在住のサーファー内田一音さん(47)の姿があった。集まった関係者らを前に、奔走した内田さんは、こうあいさつした。「皆さんの協力に感謝。今後も継続し、障害のある方に遊びに来てもらえたら」

 その2カ月前のよく晴れた日曜日。日差しが降り注ぐ由比ケ浜海岸で、市内に住む小学2年の田崎かりんさん(8)、かのんさん(8)の双子の姉妹が、初めてのサーフィンに挑んでいた。

 2人で1枚のボードに腹ばいになり、タイミングを合わせると、波に乗ったボードは波打ち際までスーッと進んだ。「全然怖くない、楽しい!」。かのんさんの笑顔がはじけた。

 見守っていた母・絵梨香さん(35)の顔にも笑みが広がった。かのんさんは生まれつき、下半身にまひがある。「やりたいことを見つけて挑戦し、前向きな心を育んでほしい。多くの体験を積み重ねることが、その一歩になると思う」。はしゃぐ2人を目で追いながら、絵梨香さんはそうつぶやいた。

 姉妹が参加したのは、内田さんが創設した障害者のためのサーフィン教室「Epic」主催の体験会。2018年10月から開いている。

 その準備は万全を期す。海岸の入り口から波打ち際まで車椅子のまま移動できるよう、マットを敷く。参加者がボードの上に乗る際はスタッフが4人ほどで手伝い、安全に目を配る。浮きの付いた車椅子も用意している。

 この日、県内外から参加した車椅子利用者ら11人は、約50人のスタッフに支えられ、鎌倉の海を約3時間、満喫した。都内に住む生方亮馬さん(42)もその一人。事故で半身不随となり、15年ほど前から車椅子生活を続ける。波乗りを楽しみ、顔をほころばせた。「サポートは大変だと思うが、ありがたい。最高の時間でした」

 「また、一緒にやりましょう」

 ビーチを背に家路につく参加者一人一人に声を掛ける内田さん。体験会はバリアフリービーチという夢への第一歩でもあった。

 自身にも障害がある。27歳でロングボードを本格的に始め、約10年後にプロの資格を取得。17年12月、米カリフォルニア州で開かれた障害者サーフィン世界選手権で初優勝を飾った。

 ただ優勝以上に、衝撃を受けたものがあった。大会の会場に選ばれた海岸は、健常者と障害者が同じように遊べる環境が整っていた。「誰もが楽しめるビーチを、鎌倉でも実現したい」。内田さんの夢が生まれた瞬間だった。

 由比ケ浜海岸に今夏、開設したバリアフリービーチ。中心を担った内田さんらの思いや取り組みを紹介する。


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