
近年、米国発のチェーン店を中心に巻き起こっている「グルメバーガー」ブーム。1個千円前後する商品を求め、行列ができる店も少なくない。低価格のイメージが強かったハンバーガー業界で、なぜ人気を集めているのか。背景と、各社の戦略に迫る。
多くの人が訪れるハンバーガー店が、横浜・みなとみらい21(MM21)地区にある。「シェイクシャックみなとみらい店」は、開店から2年たってなお、サラリーマンや観光客などで連日にぎわう。平均客単価は1500円程度と高価格帯だが、「肉の味が濃いハンバーガーが食べられる」と評判だ。
米ニューヨークで生まれた同チェーンは2015年、東京・青山に日本1号店をオープン。好調な業績を背景に、4年間で13店舗を出店し、ブームの火付け役となった。
「私たちの業態はハンバーガーレストラン。ファストフードではない」
同チェーンの国内代理店であるサザビーリーグ(東京都)の広報担当者は、従来のハンバーガー店との違いを強調する。
最もこだわっているのは「店舗で一手間加えること」。上質な「アンガスビーフ」を100%使用したパテはミンチの塊の状態で店舗に届き、鉄板で形作りながら焼くため「うま味を逃さず、肉汁たっぷりに仕上げられる」という。契約農家から仕入れる生野菜は新鮮さを保つために店舗でカットしてバンズに挟み込む、手作り感の強いハンバーガーだ。
■□■
「最も安いファストフードの一つ」
業界最大手・日本マクドナルドホールディングス(東京都)が、消費者に広く浸透させたハンバーガー業界のイメージだ。
同社は2000年に「平日半額でハンバーガーが65円」など、徹底的な低価格戦略を展開。これが一般に支持された。浜銀総合研究所の佐橋官主任研究員によれば、「多店舗展開する大手は低価格を求めるボリューム層に照準を合わせざるを得ない。業界全体で値下げが進んでいった」という。
潮目が変わったのは、同社で「期限切れ鶏肉使用問題」や「異物混入問題」などが発覚した14年。客足が遠のき、15年12月期は約350億円の最終赤字に落ち込んだ。戦略の転換を求められた同社は、「グランドビッグマック」や「クラブハウスバーガー」など500円前後する商品を次々と投入。業界全体の価格帯を底上げしていった。
時を同じくして、米国のチェーン店が上陸した。15年に「シェイクシャック」、17年にロサンゼルス発の「ウマミバーガー」など本格グルメバーガーが国内市場に続々と登場し、人気を呼んだ。佐橋主任研究員は「マクドナルドでもセットを頼めば700~800円かかる。『もう少し出して、高級なハンバーガーを食べよう』という人が増えてきたのでは」と分析する。