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〈時代の正体〉「差別ツイート野放しやめて」ツイッター社前で抗議集会

時代の正体 神奈川新聞  2017年09月09日 20:39

ツイッター社日本法人前でプラカードを掲げる抗議集会の参加者=東京都中央区
ツイッター社日本法人前でプラカードを掲げる抗議集会の参加者=東京都中央区

【時代の正体取材班=石橋 学】 ツイッターにあふれる差別投稿の放置が人権侵害を拡大させ、標的にされているマイノリティーを危険にさらしているとして、適正、迅速に削除するようツイッター社に求める抗議集会が8日、都内の同社日本法人前で行われた。100人を超えた参加者は「差別ツイート野放しやめて」「ヘイトスピーチは表現の自由にあたらない」などと書かれたプラカードを掲げ、公共のインターネットツールを運営する企業の責任を問うた。

 〈朝鮮人皆殺しにしちゃえば良い〉〈チョンなんてこの国にいらないゴキブリ〉〈日本に住む寄生虫〉―。

 日も暮れ始めた午後6時、ツイッター社日本法人が入る高層ビルに面した路上が差別ツイートで埋め尽くされた。削除されないままになっている投稿を、反ヘイト活動に取り組む主催団体「TOKYO NO HATE」が紙に印刷し、約50メートルに渡って歩道に敷き詰めたものだ。ツイッター社のフォームに従い、削除を求めて通報しても応じてもらえていない差別投稿を寄せるよう呼び掛けたところ、約2千件が集まったという。それもしかし、氷山の一角にすぎない。


ツイッター社日本法人前の歩道を埋めた差別投稿の数々
ツイッター社日本法人前の歩道を埋めた差別投稿の数々

 「私たちはヘイトスピーチに反対する市民です。どうぞ、現実を目にして、踏みつけてください。気分が悪くなり、どれだけ異常なことか分かってもらえると思います。ネットでは許されていると思うかもしれませんが、もちろんネットでも許されません。このような投稿を続けている人をツイッター社はずっと野放しにしています」

 東京駅にほど近いオフィス街を行き交う人たちに危機的な現状を訴えた。

 「気分が悪くなるどころか、命の危険を感じる立場の弱い人たちがこの社会にはいっぱいいます」

 ツイッターの利用規約では差別投稿を禁じているが、ルール違反が絶えない。匿名性を隠れみのにした差別主義者によって排斥、危害の呼び掛けや個人攻撃の道具に利用されているにもかかわらず、大半が見過ごされたり、対処が追いつかなかったりして、悪用を許している現状がある。

 差別的言動の放置はヘイトスピーチ解消法に違反するという以前に、自ら設けたルールを反故(ほご)にするという企業の倫理が問われる事態。欧州ではツイッター社を含むフェイスブック、グーグルなどの大手IT企業がヘイトスピーチに24時間以内に対処することを約束する協定を欧州委員会と結んでいる。ドイツでは適切に対処しない企業に60億円の罰金を支払わせる法律まで成立している。かたや、官民そろって規制に向けた動きが進まず、いまこの瞬間も被害を生じさせ、拡大させ続けているこの国―。

震える足で


抗議集会の参加者は敷き詰められたヘイトスピーチを踏みつけることで「ノー」の意思を示した
抗議集会の参加者は敷き詰められたヘイトスピーチを踏みつけることで「ノー」の意思を示した

 〈毎日こわいです 毎日つらいです 毎日苦しいです 助けてください〉

 川崎から参加した在日コリアン3世の崔(チェ)江以子(カンイヂャ)さん(44)は2人の子どもと一緒に作ったプラカードを掲げ、参加者の列の一番端に立っていた。

 主催者に頼まれ、スピーチを引き受けることになった。靴底から伝わるヘイトスピーチの感触に耐えながら足を踏みしめ、そびえるビルを見上げ、オフィスにいるであろうその人に向け、呼び掛けた。

 「笹本社長、ツイッター社の皆さん、私は朝鮮人です。ツイッターで毎日、死ね、殺せ、出て行け、ゴキブリと書かれている朝鮮人です」

 震える声がすべてを物語っていた。

 「私にとってのツイッターは、花が咲いたらうれしくて、夜空に月が見えたらうれしくて、大切な人たちにそれを伝えたくてツイートする、心豊かにさせてくれる大切なコミュニケーションツールでした。それがいまは死ね、殺せ、いなくなれと書かれ、毎日、ツイッターの通知が届くたびに怖いです。つらいです。苦しいです。笹本社長、ツイッター社の皆さん、どうか助けてください」

 わが街、川崎・桜本がヘイトデモの一団が押し寄せたのは2015年11月と翌年1月。安寧な日常が破壊され、差別をやめてください、ルールをつくって差別をやめさせてくださいと、ただ心穏やかに暮らせることを願って声を上げただけなのに、一緒に抗議の路上に立った中学3年生の長男とともに名前と写真がツイッターでさらされ、心身を痛めつける攻撃がとめどなく押し寄せるようになった。

 ツイートすれば「嫌なら出て行け」「被害者ズラするな」とリプライが飛んでくる。思うままに発信することを控えざるを得なくなって1年、表現の自由はおろか、当たり前に生きる自由まで引き裂かれた。

 一緒にいるところを襲われたらという恐怖で、小学生の次男から近所のコンビニ店に連れて行ってとせがまれても、駄目と言わなければならない。街中ですれ違っても、他人のふりをするよう言って聞かせる。差別主義者に出くわさないか、外出の際はヘイトデモや街宣の予定をネットで必ずチェックする。玄関を開けたらそこに暴漢が立っているのではないかと、ドアを開けるたびに息が詰まる。電車の隣の座席の人がスマホをいじっていたら、自分への差別投稿をしているのではないかと頭をよぎる。警察が巡回パトロールに来たことを知らせるカードをポストに確かめる毎日。

 「ひどい書き込みが数え切れないほどされて、個人の力ではどうにもできなくなり、助けてくださいと法務省に人権侵犯被害申告をしました。調査がなされ、法務省からツイッター社により削除要請がなされ、わずか数件ですが削除されました。何カ月もかかり、その間にさんざん拡散されました。私の中学生の子どもの名前と顔をさらし、日本から出て行けというひどいツイートが国の調査によって、それも何カ月もかかって、やっと消えた。それがいまの日本のツイッターの現状です」

役目を任じ


オフィスビルを見上げスピーチする崔江以子さん(右)
オフィスビルを見上げスピーチする崔江以子さん(右)

 どうしても伝えたかったのは、果たすべき責任を果たさないという、それこそが差別というほかない不条理によって刻まれた傷の深さ。

 「そのわずか数件でもひどい書き込みが消えたとき、私の子どもは本当に喜びました。ただ、国に働き掛け、調査をして、何カ月もかかるのではなく、ツイッター社が自社のルールにのっとって適正に、すぐに対応してくれれば、こんなに拡散され、子どもが毎朝毎朝、削除されてないことにため息をつきながら学校へ行くということはなかったと思います」

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