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『食』の現場 経済記者が行く
市場で評価と信頼を 「エダマメ」 新規就農者の挑戦

経済 神奈川新聞  2019年07月26日 19:30

エダマメの選別作業を行う秋葉さん(左)と冨岡さん=藤沢市用田
エダマメの選別作業を行う秋葉さん(左)と冨岡さん=藤沢市用田

 冷えたビールと味わいたい、夏の風物詩エダマメ。出荷が最盛期を迎える中、他業種から新たに就農した藤沢市内の新規就農者が作るエダマメが人気を集めている。

 秋葉豊さん(43)が生産する品種の「神風香(かみふうか)」は決して珍しいものではないが、昨年、初めて市場に出荷したところ「品質が良い」と関係者の間で話題となり、一般的なエダマメと比べて2~3割高い価格で取引された。

 JAさがみ「藤沢北営農経済センター」副主任役の高見沢秀規さん(50)は「市場で評価と信頼を得たことで、大手スーパーから『秋葉さんのエダマメがほしい』と依頼が来ている」と太鼓判を押す。

 今年は天候不順が続いたが、独自に土壌の改良を進めた効果もあり、顧客からは「香りも風味も良く、昨年よりもっとおいしい」と高評価が寄せられている。生産量も昨年の4トンから6トンに増量。今期は450万円ほどの売り上げを見込んでいるという。


「湘南つむぎ出荷組合」が生産したエダマメ。茶豆風味で甘味もある。
「湘南つむぎ出荷組合」が生産したエダマメ。茶豆風味で甘味もある。

 今でこそ秋葉さんは夏はエダマメ、冬はキャベツを中心として、年間30品目程度の野菜を栽培しているが、新規就農者にとって、安定した生産基盤を築くことは容易ではない。

 秋葉さんは「そもそも就農自体が大変だった」と振り返る。10年ほど前、会計ソフト会社から転職して就農を決意したが、相談支援センターでは地方の酪農法人への就職を勧められ、県内での就農を希望すると「農家の娘と結婚するしかない」と笑われたという。そのため、介護職のアルバイトをしながら無給で農家を手伝い、独学で知識を身に付けた。

 その後、県から認定新規就農者に認定されたが、当時住んでいた自治体からは「新規就農者には農地は貸せない」と断られたという。近隣の藤沢市に相談したところ、市内の農家を紹介され、市農業委員会の許可後に農地を借りられたが、肥料や農機具の出費に加え、販路の確保が悩みとなった。

 当初はレストランや直売所を1軒1軒回ったが「数がさばけず、売れ残るリスクもあった」ため、計画的な生産ができずにいたという。

 活路を見いだせたのは、JAさがみとの出合いだった。2017年、秋葉さんは農家が集まって共同で出荷するための「出荷組合」に加入。これにより、安定した販路と単価が確保され、生産に専念できるようになった。


「新鮮なエダマメを是非味わってほしい」と語る秋葉さん(右)と冨岡さん=藤沢市用田
「新鮮なエダマメを是非味わってほしい」と語る秋葉さん(右)と冨岡さん=藤沢市用田

 今年5月には、同じ志を共にする新規就農者3人と「湘南つむぎ出荷組合」を設立。作業場を共有し出荷作業を共同で行えるようになったことで、安定的な出荷が可能となり、品質保持にもつながっているという。現在、同組合では1日500袋(1袋200グラム)の出荷を目指している。

 メンバーの一人、冨岡義(ただし)さん(26)は「すぐに独り立ちすることは難しかった。一緒に作業することでスキルアップにもつながるのでありがたい」と笑みを浮かべる。

 組合名の「つむぎ」は「地域の農業を将来につないでいく」「地域の食文化をつむぐ」という意味が込められている。秋葉さんは「ここまで来るのに時間はかかったけれど、いまは成長している実感がある。技術を上げ、生産量を増やして安定した農業経営につなげ、そうすることで藤沢の農業も守っていきたい」と話している。

エダマメ マメ科。農林水産省によると、2017年度の県内のエダマメ収穫量は2550トン(全国8位)、出荷量は2170トン。



 豊富な海の幸、山の幸に恵まれる神奈川。経済部の記者が「食」の現場を歩き、旬の話題や課題、新たな試みを随時紹介する。


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