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著者の肖像
蜂谷あす美「女性のための鉄道旅行入門」

カルチャー 神奈川新聞  2019年07月26日 06:00

「列車の旅に憧れがあるけれど、どうしたらいいか分からない人に読んでほしい」=横浜市中区
「列車の旅に憧れがあるけれど、どうしたらいいか分からない人に読んでほしい」=横浜市中区

旅人の背中を押したい

 トイレは? 切符の買い方は? 必需品は? 鉄道ブームといわるが、実際に乗ろうとすると不安も多い。紀行文ライターの蜂谷あす美「女性のための鉄道旅行入門」(天夢人・1296円)は女性の立場から必要なこと、心構えを教えてくれる。その優しい視線は性別を問わず、旅慣れない、けれど旅に出たい人の背中を押してくれる。

 「女性向けといっても“カワイイ電車”を紹介するわけじゃないんです」。旅行雑誌に多い風光明媚(めいび)な路線や駅の紹介はあえて避け、実用に徹した。「憧れはあるけれど方法が分からない人の力になりたかったので」と理由を話す。

 内容は切実だ。車内のトイレは男女兼用が大半で和式も多い、ビジネスホテルのリンスインシャンプーは髪がバサバサになる、荷物を軽くするには使い捨て紙パンツを-。「意外にかさ張るのがブラジャー」「生理用品は念のために持って行こう」といった記述に、鉄道や旅行の仕組みが「男性仕様」だと気付かされる。

 「自由席の座席確保はこうする」「飲み物、食べ物は事前に買おう」「行きたいところと行きやすいところ、どちらを優先するか」など計画から準備、実行まで場面ごとに網羅する。辞典風の用語集や持ち物チェックリストも便利だ。

 これらのテーマは「自分自身の経験、失敗に照らして書いた」という。例えば夏の旅行にストールや上着の持参を勧めるのは、学生時代に薄着で夜行列車に乗り、効きすぎた冷房に一晩中「凍えた経験」に基づいている。

 「鉄道旅行の入門書が少ないと思った」と著した実用書。でも、読むだけでどこか楽しい。「四六時中景色を見ている必要はなく、乗ったら好きなように過ごせる自由度」が鉄道の旅にある、との一節は「せっかく来たんだから…」という義務感から解放してくれる。本書にも自由がみなぎっている。名所や名物に無縁の旅も楽しいのだ。

 福井市出身。高校への行き帰りに見た列車の行き先表示に「直江津」「大阪」「青森」など、まだ見ぬ土地の名を見てときめいた。「線路が続いているんだ、と想像を膨らませました」。川崎市に住む。


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