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寄り合って生きる 脳性まひ男性と介助者記録 横浜で上映

話題 神奈川新聞  2019年07月20日 12:15

やまゆり園事件機に再撮影


遠藤さんと介助する人々が集まった映画「えんとこの歌」の一場面(いせフィルム提供)
遠藤さんと介助する人々が集まった映画「えんとこの歌」の一場面(いせフィルム提供)

 脳性まひの男性と介助者たちの日々を記録した映画「えんとこの歌」が20日から、横浜市中区のシネマ・ジャック&ベティで上映される。20年前に男性らの日常を作品にした監督の伊勢真一さん(70)が、相模原市緑区の県立障害者施設「津久井やまゆり園」で19人が殺害された事件を機に、男性らが互いに「寄り合う」姿に再び、カメラを向けた。伊勢さんは「共生社会という言葉だけが先にあるのではなく、その中身を考え続けなければ」と訴える。

 「えんとこ」は遠藤滋さん(72)がいる所、縁のある場所という意味。大学時代からの友人の伊勢さんは1996年から3年間、都内のアパートで寝たきり生活を送る遠藤さんと介助する若者たちが心を通わす姿を撮り、映画「えんとこ」として発表した。

 続編制作のきっかけは、2016年7月に津久井やまゆり園で起きた殺傷事件だった。

 事件後、「障害者は不幸を作ることしかできない」との被告の言葉が報道された。伊勢さんの頭に真っ先に浮かんだのが、遠藤さんだった。「そんなことは絶対にない。地域の中で人と関わりを持ちながら生き、周囲の人を育ててもいる。遠藤の日常を伝えたかった」と伊勢さん。同年秋から撮影を始めた。

 遠藤さんは以前より、障害が重くなり、発話も難しくなっていた。介助者も多くが若い世代だった20年前に比べ、20~60代のミュージシャンや主婦、学生と幅広くなっていた。それでも、ありのままをさらけ出す遠藤さんに彼らもまた学び、共感し、「えんとこ」は大切な居場所であり続けていた。作品の中で介助者の1人はこう言う。「寄り添うんじゃなくて、寄り合う」

 月日を経て、遠藤さんは短歌を詠むようになっていた。吐息のように絞り出した遠藤さんの声を、介助者が粘り強く聞き取り、文字に起こす。事件後に残した一首がある。《己こそ弾かるる怖(おそ)れ感じてやより弱きらを斬りて見せたる》。遠藤さんの目には被告こそ、社会から排除されることを恐れていたのだと映っていた。

 事件から間もなく3年。「『悪い者による猟奇的な犯罪』というところで、社会は思考停止してしまうのではないか」。伊勢さんはそんな懸念を抱く。インターネット上で散見された被告の主張に賛同する書き込み、被害者名が匿名だった理由、生産性優位の風潮…。事件が突き付けた課題は残されたままだ。だからこそと、伊勢さんは続けた。「考え続けなければいけない。遠藤がベッドの上でしているように」。映画がそのヒントの一つになることを願っている。

 上映は8月2日までで、午前11時10分からの1日1回。


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