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社説
収容者逃走 隙や緩みはなかったか

社説 神奈川新聞  2019年06月23日 22:13

 実刑判決が確定して収容される際に逃走した男が、5日目にしてようやく逮捕された。愛川町から横須賀市まで逃げていた。この間、県内各地に足取りの情報があり、市民生活に大きな影響が出た。

 逃走自体よりも、捜査機関への信頼に関わるという意味で重大事件である。どこに隙があったのか。信頼回復のために必要なことは、形ばかりの再発防止策ではない。徹底した検証と、その内容をつまびらかにすることだろう。

 逃走事件は、大阪で交番を襲った男が拳銃を奪って逃走した事件の3日後に起きた。地域を不安にさらした点では同じだが、今回は当局が事件の発端になった点で全く異質であり、深刻な事態である。

 身柄を収容する際の失態が発端になった。検察職員5人が男の自宅を訪れ、取り逃がした。警察官も2人同行していたが、警棒しか持っていなかったという。男が刃物を振り回すという展開など想定していなかったのだろう。

 男の罪名は窃盗や傷害など。いわゆる強行犯ではなかったことで、緩みにつながらなかったか。それまで収容に手こずっていた経緯とも併せ、臨場の在り方は今後の教訓にしなければなるまい。

 深刻なのは、地域への周知が後手に回った点である。男が逃走したのは19日午後1時半ごろ。現場の警察官は署に連絡したが、署から県警本部への伝達は午後3時ごろだったという。横浜地検による事件の公表は、さらに時間がたっていた。

 愛川町が急きょ防災無線で住民に注意を呼び掛けたのは午後6時。逃走車両は翌朝に厚木市内で見つかったが、厚木市も愛川町も、それをニュースで知ったという。

 検察と警察の間で、あるいはそれぞれの内部で、どんな協議がなされていたのか。そのはざまで住民の安全という視点がすっぽり抜け落ちてはいなかったか。

 制度運用も検証が必要だろう。男は一審で有罪になり、控訴審中に保釈された。その判断は一般感覚では分かりにくい。二審判決も2月に確定していたのに、すぐ収容できなかった事情も解明が必要だ。

 事件により愛川町と厚木市のすべての公立小中学校は2日間、休校を余儀なくされた。社会に与えた影響は大きい。信頼回復には誠実な事後対応しかない。


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