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若年性認知症を支える(2)
生きた情報を提供 就労から居場所まで

社会 神奈川新聞  2019年06月23日 18:25

障害者就労継続支援B型事業所「マイWay」で職員のサポートを受けながら電気部品の組み立てなどに取り組んでいる浅野さん(右)=川崎市高津区
障害者就労継続支援B型事業所「マイWay」で職員のサポートを受けながら電気部品の組み立てなどに取り組んでいる浅野さん(右)=川崎市高津区

 若年性認知症を患っている浅野誠治さん(61)=横浜市、仮名=が、自らの異常を感じたのは50代半ばだった。

 都内の大手企業で大型案件も扱う営業マンとして活躍していたが、仕事の約束を全く忘れてしまうなど「自分でもおかしいなと感じることがありました」。軽い脳梗塞を起こしているのではないかと疑い、56歳の時に脳外科を受診したが、結果は「異常なし」。歳のせい、疲れているせいだと考えた。

 しかし、仕事のミスなど不調は続く。同僚も心配し、2016年、58歳の時に会社の産業医と面談。もの忘れ外来への紹介状が手渡された。

 横浜市総合保健医療センターで検査を重ねた結果、診断は認知症予備軍の軽度認知障害(MCI)だった。診断を受け、会社側も浅野さんの仕事内容を配慮し、上司がサポートしながら、事務の仕事をすることになった。浅野さんは記憶の障害をメモ帳の活用でカバーするなどして、仕事に当たったという。

 妻の礼子さん=仮名=にとって、浅野さんがもの忘れ外来の受診を求められたことも、MCIと診断されたことも衝撃だった。「家では普通だったので、認知症とは考えもしませんでした。インターネットで認知症について調べると、思い当たることが多く出てきて、食事も食べられず、夜も眠れなくなりました」。頼れる人もなく、将来への不安に苦しむ日々が続いた。

 転機は翌17年。県内でも若年性認知症支援コーディネーターが配置され、主治医から横浜市担当のコーディネーター村井キヌエさんを紹介された。何でも相談できる相手ができた。

 同年9月には、村井さんが会社を訪問し、浅野さんの就労や今後について会社と相談。翌10月、浅野さん夫妻と会社との協議が行われた。村井さんもそこに同席。礼子さんが会社に足を運ぶのは初めてで「村井さんがいてくれて心強かったです」と振り返った。

 会社側の回答は、60歳の定年までは、これまで通り働ける。体調優先で休暇も可能。ただし、定年延長については受け皿がない、だった。礼子さんは「これまでの仕事への配慮と、定年を迎えられることに感謝しました」。村井さんは「大手企業だったので定年までは対応してくれました。ただ、産業保健師がもっとサポートしてくれればという思いはありました」。

 定年延長がならなかったことは、浅野さんには大きなショックだった。その後、病状はMCIから認知症へと進み、道に迷うことも起きた。

 浅野さんの定年後の就労先、居場所作り、認知症の進行を少しでも遅らせることが課題になった。主治医と連携した村井さんのサポートで、傷病手当金の受給、精神障害者保健福祉手帳の取得など、さまざまな制度利用が進められた。

 定年から約1年、浅野さんは現在、村井さんが紹介した障害者就労継続支援B型事業所「マイWay」(川崎市高津区)に週3回通い、同じ若年性認知症の人や若い障害者らと一緒に電気部品の組み立てなどを行っている。「とても楽しいですよ」と笑顔だ。

 収入があることが、心の張りになっている。孫の写真を職員らに見せたり、「サザンオールスターズのチケットがやっと取れた」と音楽話をしたり。優しい人柄と持ち前の明るさでみなに親しまれている。

 村井さんは、浅野さんがコーヒー通だったことをヒントに、若年性認知症の当事者にスタッフになってもらう「Sカフェ」も企画した。横浜市総合保健医療総合センターで月1回、浅野さんらがいれたてのコーヒーを販売し、好評を博している。

 将来的には、自宅からマイWayまでの移動支援(障害福祉サービス)や、介護保険サービス利用の支援も視野に置かなければならい。「フルマラソンも走っていた運動好きの浅野さんのために、運動の機会もつくってあげたい」。村井さんは語る。

 礼子さんは「役所などで制度や施設の説明を受けても、うちが対象なのか、その時期に必要なのか判断が難しい。生きた情報は村井さんからでした」という。村井さんを通じて、同じ悩みを持つ家族と知り合えたことも大きかったと語り、コーディネーターの存在の貴重さを強調した。


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