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スパコン駆使し創薬新拠点に 東工大、川崎・殿町に設立へ

社会 神奈川新聞  2017年08月21日 10:25

研究に使う、東京工業大が開発したスーパーコンピューター (同大提供)
研究に使う、東京工業大が開発したスーパーコンピューター (同大提供)

 東京工業大学は、次世代の技術として注目される「中分子創薬」に、スーパーコンピューター(スパコン)を駆使したIT創薬技術を融合させた世界初の研究拠点を、川崎市川崎区の殿町地区に年度内にも設立する。高分子と低分子の利点を併せ持つ中分子薬の開発効率が大幅に向上し、難病やがんなどの治療薬開発が期待される。多様な研究機関が集まる殿町の立地を生かし、市や国内外の企業との産学官連携事業として進める。

 同大の情報理工学などの研究実績や自前で開発したスパコン技術を活用し、ペプチドや核酸による中分子薬の開発を加速する。これまで、薬の特性として重要な「体内での効果の持続性」と「細胞内への入りやすさ」は予測が難しかったが、スパコンでシミュレーション予測できる技術を同大が開発。実用化できれば実験期間の短縮や製造コストの削減につながるという。

 近年登場した新型がん治療薬「オプジーボ」などの高分子薬(抗体医薬)は副作用が少なく効果が高いものの、動物細胞を用いるため製造コストが高い上、分子のサイズが大きく細胞内にも入り込めない。また、従来の主流の低分子薬は化学合成によって安価で製造できるものの、サイズが小さいため、大きな標的を狙うことが難しいといった課題がある。

 一方で中分子薬は、高分子薬と同様に標的を狙いやすく、低分子薬のように人工的に安価で製造でき、細胞内にも入り込める。双方の利点を併せ持つことから創薬の新たな“主役”として、筋ジストロフィーといった遺伝性疾患やがんなどの治療薬の開発が期待されている。

 進出するのは、殿町3丁目地区の国際戦略拠点「キングスカイフロント」。羽田空港の対岸に位置し、生命科学分野など最先端の研究開発拠点が集積する。同大はペプチド分野で、同地区に本社と研究所を構える創薬ベンチャー「ペプチドリーム」と共同研究を進める。同社は、膨大な数のペプチドから特定の標的に合うものを短期間で探し出す世界唯一の技術を保有。同大を含め国内外の大手製薬企業などと既に共同研究を始めており、こうした最先端技術を組み合わせることで中分子薬の産業を世界規模でリードしていく考えだ。

 この研究事業には市内企業との連携を図る市も参画。7月に文部科学省の支援対象に選定され、2017年度は1億5500万円の補助を受ける。

 代表研究者の秋山泰教授(情報工学)は、殿町に拠点を置くメリットとして「ペプチドリーム社をはじめ、周辺にはベンチャーから大手まで多分野の企業が集まっている。製薬に限らず、ITや化学系など業界を超えた総力戦での研究が可能」と強調。「日本には中分子創薬の研究者が多い。殿町を世界的な拠点とし、開発を進めていきたい」と意気込んでいる。


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