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【K-Person】若杉遼さん
ハリウッドでかなえた CGアニメーターの夢

K-Person 神奈川新聞  2019年06月23日 10:37

若杉遼さん


若杉遼さん
若杉遼さん

 「CG(コンピューターグラフィックス)アニメーターは、キャラクターにどんな演技をさせるか、常にアイデアを求められる。心掛けているのは、自分を信用しないこと。そんなに特殊な勉強も経験もしていないから、自分の引き出しの容量はたかが知れている。リサーチを重ねたり、人からアイデアをもらったりして分母を広げ、そこから何を選択するかで自分のセンスを出しています」と屈託なく笑う。

 ハリウッドのCGアニメ制作の現場で活躍する31歳。製作に参加した映画「スパイダーマン:スパイダーバース」は第91回アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞した。3DCGアニメでありながら、アメリカンコミックスの質感を再現した手描き表現を加えるなど、映像表現の緻密さも大きな評価を受けた。「製作中から、必ず面白い映画になるという期待感がありました」と手応えを語る。

 高校卒業までは野球に熱中していたが、大学入学を機に「CGアニメーターとしてピクサーで働く」という夢に突き進んだ。米国の美術大学を卒業後、同国の映像制作会社ピクサー・アニメーション・スタジオのインターンとして採用され、経験を積んだ。


「スパイダーマン:スパイダーバース」(C) & TM 2019 MARVEL. (C) 2018 SPAI. All Rights Reserved.
「スパイダーマン:スパイダーバース」(C) & TM 2019 MARVEL. (C) 2018 SPAI. All Rights Reserved.

 「アニメーションについての考えの基盤はピクサーで身に付けたもの。アニメーション映画の製作は明確な分業制。でも“Story is King”という考えに基づいて、全員が物語を伝えるために仕事をするという理念は、働くことを楽しくさせてくれる」

 2015年にソニー・ピクチャーズ・イメージワークスに入社、動物たちのコミカルな動きが愉快な「アングリーバード」で初めて映画製作に関わった。「自分の名前を映画館のスクリーンで見るという夢がかなってうれしかったし、子どもたちが映画を見て笑ってくれていることに大きな手応えと喜びを感じた」

 同僚と立ち上げた3DCGアニメのオンラインスクール「アニメーションエイド」は今年で3年目。日本を飛び出し、ハリウッドで活躍する卒業生も輩出している。スクールで出す課題は「楽しんで取り組むこと」が条件だ。「楽しく能動的に取り組んでいる時こそスキルが伸びる。成長すればもっと楽しくなる。よいサイクルを作りたいんです」

わかすぎ・りょう CGアニメーター。1987年生まれ。厚木市出身、カナダ・バンクーバー在住。県立厚木高校、東京工科大学を経て2012年に米国の美術大学を卒業後、ピクサー・アニメーション・スタジオでCGアニメーターとしてキャリアをスタート。15年からソニー・ピクチャーズ・イメージワークスに所属。「アングリーバード」(16年)、「コウノトリ大作戦」(同)、「スマーフ スマーフェットと秘密の大冒険」(17年)などに参加。18年製作の「スパイダーマン:スパイダーバース」は8月7日にブルーレイとDVD発売。3DCGアニメに特化したオンラインスクール「アニメーションエイド」の講師としても活躍中。

記者の一言
 父親の影響で、子どもの頃からハリウッド映画に強い憧れがあったという。「学生時代、海老名や厚木の映画館でスターウォーズの1~3を見たことは、今の仕事をするきっかけになった。ちょうど映画の世界でCGの技術が花開いた時代でした」。

 大学時代は、独学でCGアニメの勉強に没頭。「高校までは野球しかしていなかった。昔から、自分が好きだと思うことしかできないんです」とはにかむ。

 夢を応援してくれた家族や、のびのびと過ごせた幼少期の環境に感謝しており、いつか作品で恩返ししたいという。「いずれは監督にも挑戦したい。日本の子どもたちに向けて、好きなものを好きと言っていいんだよというメッセージを伝えられる作品を作れたら」。夢に真っすぐな「若杉遼監督」の作品が今からとても楽しみだ。


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