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絵本「ビビを見た!」を舞台化 7月4~15日KAAT

カルチャー 神奈川新聞  2019年06月20日 13:20

「ホタルとビビの成長の物語と、パニック状況をいかに並行して描けるか、試行錯誤しています」と語る松井周 =KAAT
「ホタルとビビの成長の物語と、パニック状況をいかに並行して描けるか、試行錯誤しています」と語る松井周=KAAT

 生まれつき目が見えない少年ホタルを軸に極限状態の世界を描いた絵本「ビビを見た!」(作・大海赫(おおうみあかし))がこの夏、KAAT神奈川芸術劇場(横浜市中区)で舞台化される。演出・上演台本は劇作家で俳優の松井周。「ぐるりとひっくり返った世界」で人間はどうなるのか、という根源的な問いに迫る。 

 「7時間だけ見えるようにしてやろう」。ある時、ホタルの耳元で何者かの声が響く。しかし、目が見える代わりにホタル以外の人が盲目になる。正体不明の「敵」に襲われるとの報が流れ、町はパニックに。全ての人が狂気に身を委ねる中、ホタルはビビという女の子と出会い…。

 「パニック状況を舞台上に出現させたいと思ったんです。ある種の緊張状態をシミュレーションするような作品が創りたかった」と松井。危機的状況の中で人は日常とは異なる自分になる可能性があるとして、「ルールが無用になったところでむき出しになる野蛮さを深く考察する、そんな意味がこの舞台にあります」

 「いま尻尾を巻いて逃げ出すようなやつは死んでしまえ」と熱狂する警察署長の演説に続くように、原作では「敵」の正体が判然としないまま恐れと憎悪を募らせ、一つの方向に猛然と進む集団が描かれる。大海の緻密で強烈な色彩感を帯びた挿絵が読者に衝撃を残す傑作だ。

 1974年の作品(2004年に復刊)だが「あまり時代を感じない」と松井は言う。「危機が迫った時に声が大きい方向に全員が流れ、出口を求めて殺到する現象はいつの時代にも当てはまる」

 ホタルの視界が開ける7時間は「世界最悪の日」ともいえる悲惨な状況にあるが、神々しさの象徴でもあるビビとの出会いが一つの「救い」にもなると松井はみる。「7時間しか目が見えないのは残酷とも言えるし、その一方で、ホタルはその偶然のいたずらの中で何かをつかみ取ってもいるんです。それは僕にとってすごくふに落ちる描かれ方でした」

 「目が見えるようになってから見えなくなるまでの間、ホタルの目に何が焼き付くのか。極限状態に身を置いた自分はどう振る舞うのか。観客の皆さんに感じ取ってもらえる舞台にしたい」と語る松井は、一呼吸置きつつ言葉をつないだ。

 「ホタルのようにある感覚が失われた時に、耳で何を聞こうとして、体はどう動くのか。頭で考え目で見るだけではなく、あらゆる感覚で舞台を体感してほしい」



 ホタル役は岡山天音、ビビ役は石橋静河。7月4~15日(9日休演)。前売り一般4800円、当日5300円(対象日4、5、8、10日)ほか。問い合わせはチケットかながわ電話(0570)015415。


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