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「ヘイトを許さない」 地域の総意示す条例を

社会 神奈川新聞  2019年06月18日 05:00

長年の取材の経験からヘイトスピーチの害悪を説く安田さん=相模原市南区
長年の取材の経験からヘイトスピーチの害悪を説く安田さん=相模原市南区

 ヘイトスピーチをはじめ外国人差別の問題に詳しいジャーナリストの安田浩一さんが16日、相模原市南区で講演した。「差別を放置すれば人を壊し、地域社会を壊す」。川崎市で進む条例制定の動きに「ヘイトスピーチを許さないという意思を地域の総意として示してほしい」と期待を寄せた。

 人種差別団体「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の実像を追った「ネットと愛国」の著作などで知られる安田さんが力を込めて語ったのが、ヘイトスピーチと表現の自由を巡る「誤解」の問題だった。大学で講演した際、「規制をすれば世の中が窮屈になるのでは」という学生の反応に「ヘイトスピーチがある方が自由で伸び伸び生きられる社会なのか」と問い返した経験を語り、「差別を野放しにせず、レイシストにとって不自由きわまりない社会をつくることが、結果的に誰もが自由に生きる社会をつくることになる」。人間の存在を否定するヘイトスピーチは表現の自由に含まれるものではなく、放置すれば社会全体を壊していくという害悪を踏まえ、そう説いた。

 強調したのが「ヘイトスピーチは社会的力関係で強い者が少数派の属性を攻撃するもので、生み出されるのは一方的な加害者と被害者しかない」という差別の本質だった。その目にはメディアでさえ認識が不足していると映る。LGBT(性的少数者)を差別する文章を月刊誌に寄せた自民党の杉田水脈衆院議員に関するテレビ局の特集で、杉田氏を囲んで抗議する人々の姿を指してアナウンサーも評論家も「社会が分断されている」と評した。「分断は差別する側が一方的、暴力的に線引きを行う。分断を強いる側への抵抗は社会の役目なのに、被害者の姿がメディアに見えていない」

 2016年施行のヘイトスピーチ解消法が禁止・罰則規定のない理念法にとどまっていることもあり、「特定の人種に対して『殺せ』『追い出せ』と言っても罪に問われない。やりたい放題で被害者が生まれ続けている」。民衆の手で罪のない命が奪われた関東大震災における朝鮮人虐殺を例に「昔からの差別を克服しないままリニューアルされ、沖縄の人々やニューカマーの外国人に広がっている」と警鐘を鳴らした。

 「子どもがよってたかって殴られていたら理由を尋ねたり、殴り返せと説教したりせず、いじめを止めるはず。差別を止めるのも人として当たり前で、社会のたしなみだ。差別があれば、行政や市民が駆け付け、この社会を壊すなと訴えるだけだ」と説く安田さんは条例の重要性を強調した。「ヘイトスピーチは許さないという意思を地域の総意として表示することになる。隣人を守り、地域社会を守り、日本社会を守るために大事なことだ」

 講演会は、相模原市議選で極右政治団体「日本第一党」の公認候補者の落選運動に取り組んだ「反差別相模原市民ネットワーク」が主催した。近く議会で素案が発表される川崎市の条例について「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」による報告もあり、田中俊策事務局長は「落選運動に続き、条例制定でも川崎市に続いていきたい」と話した。


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