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氾濫リスク、住民共有 県内で進む対策

減災 神奈川新聞  2019年06月16日 09:35

増水時に氾濫や侵食などの恐れがある箇所で行われた多摩川の共同点検=3日、川崎市幸区
増水時に氾濫や侵食などの恐れがある箇所で行われた多摩川の共同点検=3日、川崎市幸区

 7月で1年となる西日本豪雨や2015年の関東・東北豪雨を教訓に、河川洪水時の「逃げ遅れゼロ」に向けた対策が神奈川でも進んでいる。防災機関や住民らが氾濫の恐れがある箇所について情報を共有する取り組みが定着し、中小河川も水位監視の網が広がりつつある。即時の観測データや危険性を示す情報をスマートフォンなどですぐに確認できる仕組みも徐々に整っており、実際の行動にどうつなげるかが家庭や地域の課題となっている。

 「マンションより上流側は暫定の堤防。緊急船着き場から下流側の六郷橋にかけては重点監視区間で、(増水時に)浸食の恐れがある」

 3日、川崎市幸区の多摩川で行われた共同点検。国土交通省の担当者が周囲を見渡しながら、氾濫リスクの現状を県や市の関係者らに説明した。川崎駅に近くマンションや事業所、店舗などが立ち並ぶこのエリアは、多摩川が氾濫すると広範囲に浸水する恐れが大きく、避難が欠かせない。

 そうした現況を自治体や地元住民らと実際に現場を見て共有することが目的の共同点検は、鬼怒川が決壊した関東・東北豪雨を機に全国に広がった試みだ。梅雨や台風などで水害のリスクが高まる出水期(6~10月)に合わせ、国が管理する1級河川の鶴見川や相模川でも実施されている。

 県が管理する中小河川でも進められるようになり、18年度は山王川(小田原市)や荻野川(厚木市)、引地川(大和市)など10河川を対象に行った。参加した自治会関係者は「住民の意識が高まるようにしたい」「安全な避難経路を考えたい」などと、得られた情報を地元に浸透させる必要性をかみしめていた。


森戸川に設置された危機管理型水位計(左)。増水時の水位をウェブサイトで確認できる=小田原市内
森戸川に設置された危機管理型水位計(左)。増水時の水位をウェブサイトで確認できる=小田原市内

 県内の中小河川は川幅が狭いだけでなく、流域の都市化もあって水位上昇のスピードが速い。県が水位を観測しウェブサイト「神奈川県雨量水位情報」で公開している85の「水位周知河川」では、避難の目安とすべき段階的な水位が設定されているものの、市町村は避難勧告などを発令するタイミングを逸しがちだ。

 そのため、県は増水時の観測に特化した「危機管理型水位計」=自助のヒント参照=を増やし、住民らがウェブサイトなどから主体的に危険性を把握できるようにする対策を急いでいる。

 河川整備が遅れている箇所や周辺に医療機関などがある地点を優先しており、18年度は恩田川(横浜市緑区)や滑川(鎌倉市)、金目川(平塚市)など30河川の34カ所に設置。19年度は大岡川や平作川、境川など20河川の28カ所に取り付ける。

 これらの地点には、簡易型の監視カメラも整備することにしている。水位の情報と組み合わせ、切迫感がより伝わる仕組みを構築するためだ。

 また、行政機関が台風接近時などにあらかじめ取るべき防災対応を時系列で定めるタイムライン(防災行動計画)の対象を水位周知河川にも拡大する。タイムラインの主体を住民に置き換え、一人一人が避難のタイミングなどを決めておくマイタイムラインについても、市町村と協力して定着を図る方針だ。

水防団、退避基準策定へ

 大雨時に避難誘導や水害対応などを担う水防団と消防団に関し、国土交通省は、危険が迫った際に活動を中止する基準の策定に着手した。退避基準が未定の団体は少なくないとみられ、逃げ遅れて被害につながる恐れがあると判断。早期公表を目指して作業を急ぎ、水防活動を監督する市町村に地域版の基準作成を促したい考えだ。

 各地の団員は自営業者や会社員らが大半を占めている。同省は昨年末、全国から抽出した223団体の2230人を対象にアンケートを実施し、半数超の回答を得た。

 その結果、34%の団体は「基準がない」、35%が「基準はあるが十分ではないと感じる」とした。団員の25%は災害時や訓練中、川に流されるといった危険を感じた経験があると答えた。昨年7月の西日本豪雨では特別警報を受けて退避したものの、漏水が起きた堤防の応急処置で再出動した事例も見られた。

 基準を定めている団体は、判断材料として雨量や堤防の亀裂といった前兆現象のほか、避難勧告・指示、河川の水位などを組み合わせているケースが目立った。

 同省は有識者の意見も踏まえて基準をまとめ、地域の事情に応じた基準を作る際の考え方や指標も示す方針。

自助のヒント 危機管理型水位計
 2017年の九州北部豪雨で氾濫した福岡県朝倉市内の中小河川に水位計が設置されていなかったことを受け、国土交通省が企業に開発を呼び掛け、普及を進めている。従来の水位計が1基でおおむね1千万円以上と高額なのに対し、洪水時の水位観測に特化した危機管理型の設置コストは10分の1程度で、太陽光パネルを付けるなどして維持管理費も抑えている。サイズの小型化も図られており、超音波や水圧などで水位を計測する。神奈川県のウェブサイトから、設置場所や水位の観測状況を確認できる。


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