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身体拘束過剰か、問う 大和市内の精神科病院で男性死亡、改善求め遺族ら署名募る

社会 神奈川新聞  2017年08月13日 15:00

亡くなったケリー・サベジさんの写真を携え、会見に臨んだ母親のマーサさん=7月19日、厚生労働省
亡くなったケリー・サベジさんの写真を携え、会見に臨んだ母親のマーサさん=7月19日、厚生労働省

 大和市内の精神科病院で5月、入院中だったニュージーランド国籍のケリー・サベジさん=当時(27)=が10日間身体拘束された後に死亡したとされる問題で、市民団体「精神科医療の身体拘束を考える会」が状況改善を求める署名を募っている。海外に比べ、頻繁かつ長期間行われているとして人権侵害と指摘される日本の身体拘束。同会は「この悲劇を『1件の事件』として消費せず、社会の構造的な問題によって引き起こされていることを知り、一緒に考えてほしい」と訴えている。

 同会はサベジさんの死亡を受け7月19日、研究者や障害者団体、遺族らが結成。身体拘束の問題を周知することで状況改善につなげようと、インターネット上で署名活動を行っている。

 同会によると、サベジさんは鹿児島県内の小学校で英語教員を務めていたが、4月に持病の精神疾患を悪化させて以降は横浜市内に住む兄の家に移った。外に飛び出そうとしたり大声で叫んだりしたため、30日に大和市内の精神科病院に措置入院となり、手足と腰をベッドに固定した状態で10日間、身体を拘束された。5月10日に心肺停止状態で見つかり、市内の別の病院に搬送され、7日後に心不全で死亡した。兄は搬送先の病院の医師から「長時間の拘束によって深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)が発生し、心肺停止となった可能性がある」と説明されたという。

 病院側の弁護士は神奈川新聞社の取材に対し、「遺族から訴訟予告をされており、事実関係を含め裁判で明らかにする」とコメントしている。

 同会は、現時点では署名の募集期限を定めていないが、集まった署名とともに国に対し、▽24時間以上の長期身体拘束の禁止▽身体拘束による人権侵害の実態調査▽録画など可視化による身体拘束の実施過程の検証・公開-などを求める要請文を提出する方針。

 サベジさんの死亡は日本に先立ってニュージーランドをはじめ海外メディアで報じられ、世界各地からも「身体拘束は野蛮で時代遅れ」といったコメントが多く寄せられているという。

 署名は、署名サイト「Change.org」内に設けられた「精神科医療における身体拘束の状況の改善を求める」と題したページで受け付けている。

平均96日「尊厳傷つける」




 厚生労働省は、精神科病院で身体拘束されている患者数を毎年6月30日付で集計している。2015年度(暫定値)は9870人となり、05年の5623人から10年間で75・5%増。14年度には1万人を超え、過去最多となった。今年7月、塩崎恭久厚労相(当時)は「件数がなぜ増えたのか、しっかりと調べて対処していきたい」とした。

 また、拘束はないものの、本人や周囲に危害が及ぶ可能性が高いとして患者用の保護室で隔離されている人数も15年度は9688人に上り、05年の8097人から増加した。

 精神保健福祉法では、自傷の恐れがあったり、暴れるといった多動などが著しい場合に身体拘束が認められているが、あくまで「代替手段が見いだされるまでの間のやむを得ない処置」であり、「できる限り早期に他の方法に切り替えるよう努めなければならない」と定められている。

 杏林大学の長谷川利夫教授が15年度に行った調査によると、国内の精神科病院で身体拘束の平均日数は96日。他の多くの国では数時間~数十時間となっており、長谷川教授は「異常事態。人の尊厳を傷つけ、命まで奪いかねない非人道的なもの」と批判している。

 日本を含め174の国と地域が締結している障害者権利条約では身体の自由に関する権利が認められており、必要以上の拘束は国際的な基準でも人権侵害に当たる。

 長谷川教授は「日本では医療や医師という権威が身体拘束を正当化している現状がある。人権が守られる社会を実現していくという考えを一人一人が持たなければ、身体拘束は減らない」と警鐘を鳴らしている。


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