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縮尺変えると見方も変わる 横須賀美術館で作品展

カルチャー 神奈川新聞  2019年05月30日 16:07

横須賀市上町にある「あたり湯」を再現した作品と高橋勝美
横須賀市上町にある「あたり湯」を再現した作品と高橋勝美

 精密な縮小模型から巨大化したオブジェなど、実際の大きさとは異なる縮尺を生かして作られた美術作品を紹介する「センス・オブ・スケール展」が、横須賀美術館(横須賀市鴨居)で開催中だ。11組のアーティストによる約100点が並ぶ。なじみのある事物への印象を変えることで、新しい物の見方に気付かせてくれる。

 横須賀市在住の和風ドールハウス作家、高橋勝美(75)は、52歳の時から独学で制作に取り組んできた。「当時、和菓子屋さんに勤めていて、和菓子のやわらかさを粘土で作れないかな、と始めたのがきっかけ」と言う。

 「とにかく作りたい一心で、楽しくて仕方がない。楽しいってすごく大事ですよ」とほほ笑む。2年に1作のペースで、実在する商店や学校などを5分の1から30分の1などの大きさで再現する。


高橋勝美の「雨上がり 大木理髪店」
高橋勝美の「雨上がり 大木理髪店」

 かつて同市衣笠商店街にあった大木理髪店は、再現する時代を昭和30年ごろに設定。歩道は舗装されておらず、雨上がりで水たまりがある状態に仕上げた。

 「店主に昔の話を聞き、建物やバリカンなどの道具も測らせてもらった。当時の写真では、貼られていた映画ポスターが一部しか分からなかったが、資料を調べて特定した」という徹底ぶりだ。

 「職業『バス整備士』」は、工具が並んだ作業場を再現し、今にも整備士が現れそうな雰囲気。京浜急行でバス整備士として働いていた亡き夫の俊昭から作ってほしいと頼まれていたもの。「どうしても夫のために作りたかった」と亡くなった後に完成させた。泊まり勤務の際は、昼と夜の2食分の弁当を携えた、と当時をしのんで二つの弁当包みを作業場に置いた。

 大型連休中は、毎日のように会場に通い詰めた。「見る人が、目を輝かせて楽しんで見てくれるのがうれしい。もっといい物を作ろうという気になる」とますます意欲を燃やしている。


岩崎貴宏の作品が並ぶ一角
岩崎貴宏の作品が並ぶ一角

 他の作家で、特に横須賀の地を意識させるのが平町公(いさお)(60)だ。横浜市鶴見区在住。コンビナートが立ち並ぶ横浜・磯子から、三浦半島を描いた壁画に圧倒される。津波から守るため、半島が今より30メートル隆起していると設定され、天災をはじめ人災や戦災を乗り越え、平和に暮らしたいとの願いが込められている。

 1975年生まれの岩崎貴宏も横須賀をテーマに新作を展示。黒船が来航し日本の近代国家への歩みが始まった地である横須賀と、原爆投下という近代の終結を示す自身の故郷、広島を対比させ、時代の流れや時間という大きなスケール感で問い掛ける。

 6月23日まで。3日休館。一般900円、高校・大学生・65歳以上700円。問い合わせは同館☎046(845)1211。


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