1. ホーム
  2. 減災
  3. 警戒レベル2の箱根山、15年のレベル3を振り返る

減災新聞
警戒レベル2の箱根山、15年のレベル3を振り返る

減災 神奈川新聞  2019年05月26日 11:14

大涌谷の近くで車両に積もった火山灰を採取する東海大の大場武教授(左)ら =2015年6月30日
大涌谷の近くで車両に積もった火山灰を採取する東海大の大場武教授(左)ら =2015年6月30日

 県内唯一の活火山、箱根山(箱根町)で火山活動が活発化し、気象庁は5段階の噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)へ引き上げた。観測史上初の噴火に至った2015年の活発化では、噴火警戒レベルが3(入山規制)まで上がり、県温泉地学研究所の観測で地震の総数が1万2千回を超えるなどしたため、影響が長期化した。当時の活動は、どのようなものだったのか。

 地震が多発し始めたのは2015年4月26日。箱根山に構築した独自の観測網で、気象庁よりも小規模な地震をキャッチできる温地研が100回を超える微小な火山性地震を捉えた。その約2カ月後の6月29日にごく小規模な噴火が起きるまで、大涌谷を中心に、さまざまな現象が観測された。

 大型連休に入った5月3日には大涌谷で「暴噴」が確認された。温泉供給施設の蒸気井から噴出している蒸気の勢いが強まり、コントロールができない状況のことだ。

 同5日には、ふもとの湯本で震度1を観測する地震が繰り返し発生するなどしたため、気象庁は「火山活動がさらに高まった」と判断。翌6日、噴火警戒レベルを2へ引き上げた。

 これを受けて7日に行われた衛星による地殻変動観測で、大涌谷の蒸気井の周辺が最大で6センチ隆起していることが分かった。こうした局所的な隆起の場所は噴気の強い場所とほぼ重なっており、熱水(高温の地下水)が地表方向に集中したためと考えられている。

 一方、山体の膨張を示す地殻変動は、地震の増加より時期が早く、4月初めごろから表れ始めていた。


 箱根山の地下約10キロほどの深さには、火山活動の源である「マグマだまり」がある。さらに深い所からマグマが供給されるとマグマだまりが膨らみ、山全体が膨張することが過去の火山活動から分かっている。

 こうした山体の膨張は、火山活動活発化の先行的な現象とされる。衛星利用測位システム(GPS)の観測地点間の距離の伸びから把握されるが、データの推移などを慎重に見極めなければならず、評価には時間を要するという。

 地震がピークとなったのは、5月15日。温地研の観測数で千回を超え、最大で震度3相当の揺れも記録された。

 4月末は大涌谷付近だった地震の発生地域は5月末にかけて、神山・駒ケ岳付近、湖尻付近、金時山付近へと箱根山のカルデラ(東西8キロ、南北12キロ)内を移動していったが、同15日を境に地震の回数は徐々に減少。そのまま沈静化するとも考えられていたが、6月29日午前7時半ごろから再び大涌谷付近で地震が急増した。

 そして、同日午後0時半ごろ最初の噴火に至る。温地研などには「火山灰のようなものが降っている」といった情報が寄せられ、現地調査を行ったものの、蒸気や霧の影響で視界が利かず、火口は発見できなかったという。

 翌30日の調査で火口の存在が分かり、数十センチほどの噴石や火山灰が周囲に飛散して積み上がっていることも判明。噴火の発生が確かめられたため、気象庁は噴火警戒レベルを3に引き上げた。29日の噴火に伴って熱水が移動したことを示す火山性微動が観測されていたことも明らかになった。


 噴火は断続的に発生したが、産業技術総合研究所や山梨県富士山科学研究所などの調査で、6月29~30日の噴出量は40~130トンと推定された。火山灰は大涌谷の北西を中心に約4キロ先まで飛散していたものの、火山の噴火としては「ごく小規模」とされている。

 噴火後、活動は次第に沈静化し、噴火警戒レベルは9月11日に2へ、11月20日に1に下がった。しかし、大涌谷の斜面に形成された複数の火口や噴気孔から噴き出す蒸気の勢いは弱まらず、火山ガスの濃度は今も安全なレベルにまで低下していない。

 そうした中で今年3月中旬ごろから再び山体が膨張し、5月に入って地震が多発するようになった。19日に引き上げられた噴火警戒レベルは2のままだが、地震の回数は15年と比べて少ない。温地研は「顕著な活動時と比べ、小さな変化にとどまっている」とし、注意深く観測を続けている。

自助のヒント 火山性の地震と微動
 「火山性地震」とは、火山の噴火のほか、マグマの動きや熱水(高温の地下水)の移動などに関連して、火山体の中やその周辺で発生する地震のことをいう。これに対し、P波(初期微動)やS波(主要動)が不明瞭で、小さい振幅の揺れが長時間続くのが「火山性微動」。箱根山でよく発生するのは火山性地震で、県温泉地学研究所は1時間に10回以上観測された場合に「群発地震」と位置付けている。火山性微動が捉えられたことはなかったが、観測史上初の噴火が起きた2015年6月29日に発生した。


シェアする