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新生児捨てた母親に執行猶予 横浜地裁支部「反省を考慮」

事件事故 神奈川新聞  2019年05月23日 05:00

 生まれたばかりの男児を他人の家の敷地に遺棄したとして、保護責任者遺棄罪に問われた中国籍の技能実習生の女(22)=川崎市川崎区=の判決公判が22日、横浜地裁川崎支部であり、江見健一裁判長は懲役1年6月、執行猶予4年(求刑懲役1年6月)を言い渡した。

 江見裁判長は判決理由で、「男児の生命身体に重大な影響を及ぼす危険な行為」と指摘。被告が妊娠5カ月で来日し、妊娠を隠しながら食品加工工場で技能実習生として働いていた経緯から、「技能実習を優先させ養育の見通しもないまま出産に至り、場当たり的行動に基づく犯行だ」と非難した。

 一方で、「反省の弁や被害者と生活を共にする意向を考慮した」と執行猶予の理由を説明した。

 判決などによると、被告は2018年12月19日、会社の寮で出産した男児を毛布などでくるみ、近くの民家の敷地に置いて立ち去った。




技能実習制度の問題点を指摘する鳥井さん(左から2人目)ら支援団体メンバー=川崎市役所
技能実習制度の問題点を指摘する鳥井さん(左から2人目)ら支援団体メンバー=川崎市役所

 執行猶予判決に安堵(あんど)し、集まった支援者に「うれしかったです」と日本語でおじぎをした被告。記者会見した支援団体メンバーの表情はしかし、一様に晴れず、判決が触れなかった制度面の課題を口々に指摘した。

 「4年の執行猶予は重すぎる」とは外国人技能実習生権利ネットワークの旗手明さん。被告は来日費用を負担した親に気兼ねし、妊娠を隠し通した。判決は「日本での技能実習を優先させ、出産や養育に見通しを持たないまま生活を続けて出産に至り、経済的理由などから養育は困難と考えて犯行に及んだ」と断じたが、旗手さんは「実習生を追い詰めた制度的問題を一顧だにしていない。事態打開の選択肢や支援を求める知識が与えられないままうろたえていたのが実情で、個人の問題ではない」。

 憂慮するのは4月から始まった、外国人労働者の受け入れを拡大する在留資格「特定技能」の新制度だ。「労働力だけ活用しようとするシステムは技能実習制度と同じで、同じ問題を抱えることになる」

 中国の送り出し機関の契約書には恋愛禁止という条項があり、妊娠を知った被告を苦しめたとみられる。

 「断じられるべきは技能実習の制度」。移住者と連帯する全国ネットワークの鳥井一平さんは「生身の労働者から労働力を切り取る制度が人権を踏みにじり、加害者と被害者を生んでいる」と憤る。「職場で働くだけでなく生活し、けんかもし、恋愛もするんだ」とした上で、「日本ではできない失踪防止の締め付けを現地にやらせ、奴隷状態に置く。人権無視がまかり通る制度は廃止するしかない」と力を込める。

 被告は男児を育てることを希望し、親子関係の確認を横浜家裁に申し立てている。児童相談所から子どもの引き渡しが認められるよう、子育てしながら技能実習が続けられる環境などを求め、受け入れ企業との団体交渉も進められているという。


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