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鉄道好きの記者たちが綴るコラム
「前照灯」(297)のと鉄道の車窓

社会 神奈川新聞  2019年05月17日 12:00

能登中島駅に着いた「のと里山里海号」。2015年に新車投入されたNT300形。この駅の留置線には古びた郵便車が保存展示されている

 乗っておけばよかったと臍を噛む。貧乏暇なしで油断しているうち多くのローカル線が消えていった。奥能登の鉄路も消えた。JR七尾線は七尾以遠が第三セクター「のと鉄道」に引き継がれたものの、穴水から先は廃止の大ナタが振るわれた▼穴水駅の跨線橋から眺めると、北へ向かう線路が途切れている。ここから分岐して蛸島まで半島南岸を丹念にたどった能登線60キロ余。そして日本海に出る輪島までの山間区間20キロ余。せめてもここは残せなかったかと思う。廃線跡が草深い▼穴水から観光列車「のと里山里海号」に乗った。女性アテンダントたちが沿線ガイドをしてくれる。運転席わきで前方展望を楽しんでいると、茶菓子の接待もあるので座席にどうぞ、と再三声を掛けられた。気遣いが身に染みる。生き残りの労苦はどこの地方線も同じだ▼能登中島までは勾配や曲線が多い。なるほど列車名のとおり穏やかな山里と、七尾湾の輝きを見下ろす。トンネルの中に電飾を施し、岸辺には復元された独特のボラ漁の仕掛けなど。当たるを幸い観光に生かしている▼と、急に運転士が「業務連絡」とマイクに告げ、停車した。「左後方にイルカ」。これにガイドが直ちに呼応して車窓が沸き立つ。「えっ、どこどこ」。内海を回遊するというバンドウミナミイルカ。騒ぎを乗せて2両編成の気動車は暫時、高みのウオッチング。ローカル線はいいなあ。(F)


のと鉄道は33キロ余の路線。穴水駅から先の線路は車止めで終わっている。輪島までの区間は2001年に、能登線はその4年後に消えた

車窓から見える「ボラ待ちやぐら」。江戸時代からあった原始的な漁。やぐらの上で漁師がボラの群れの通過を待って仕掛けを操ったという

西岸駅を過ぎた辺り。野生イルカは湾内に家族ですむらしい。遭遇率が高いというが、せっかくの停車にもかかわらず筆者には見えなかった

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