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横浜工作所・小川さん
先人の技術、後世に 氷川丸を改修工事を指揮

横浜みなと新聞 神奈川新聞  2019年05月13日 17:25

今回の工事でこだわった窓枠を示す小川さん。床のチーク材を再利用し、金具を復元、ねじも真ちゅう製を使った=4月15日、日本郵船氷川丸
今回の工事でこだわった窓枠を示す小川さん。床のチーク材を再利用し、金具を復元、ねじも真ちゅう製を使った=4月15日、日本郵船氷川丸

 国の重要文化財で4月に竣工(しゅんこう)から89年を迎えた日本郵船氷川丸。文化庁などの補助を受けて、ナビゲーションブリッジと呼ばれる船橋(せんきょう)が改修された。工事の指揮を執ったのは横浜工作所(横浜市鶴見区)主任技師の小川典之さん(39)。建造に携わった先輩たちの優れた技術に触れ、後世に伝える喜びをかみしめている。

 1月上旬。横浜・山下公園前の海上で係留されている氷川丸の船橋に足場が組まれ、大がかりな工事が始まった。実は、建造時の設計図が残されていない。そのため、氷川丸と同じ1930年に建造された帆船日本丸などの修繕を経験した熟練者らの経験と感覚が頼り。多くの有識者の意見や日本郵船歴史博物館で展示されている氷川丸模型も参考にして作業が進められた。


チーク材のデッキを外して梁を補強した改修工事=1月18日
チーク材のデッキを外して梁を補強した改修工事=1月18日

 チーク材のデッキを支えている鋼鉄製の梁(はり)の付け替え作業は、床板を外してようやくデッキの構造が分かったという。建造当時のリベット工法を極力残し、船体の復元と安全性を両立させるため、溶接部分は最小限度にとどめた。

 ブリッジは上から見ると緩やかな曲線を描いている上、水はけを良くするため、船を断面で見ても両舷(げん)が下がっている。「1本の木で立体的な曲線を作るのはとても大変な作業。当時の技術でどうやっていたのか、僕にはできない」と肩をすくめた。

 工事が終わった3月末。「氷川丸なら自分のためにも、みんなのためにもなると引き受けたが、苦しかった。しびれました」と工期の3カ月間を振り返った。


「高い技術と、仕上げの美しさを見てほしい」と話す小川さん=4月15日
「高い技術と、仕上げの美しさを見てほしい」と話す小川さん=4月15日

 普段は、沖合に停泊中の船に出向いて修理している。氷川丸の修繕に携わって7年ほど。横浜市金沢区で生まれ、子どものころから訪れている好きな船。「まさか自分が修繕をやるとは思わなかった。それが重文というと緊張しますよ。貴重だし、他の船とは違って特殊だし」。例えば、ボルトはミリ単位やインチ単位のものが混在する。ふんだんに使っているチーク材は高級品だ。

 今回、失われていた真ちゅう製の金具を復元し、使わなくなったチーク材を窓枠の一部に再利用した。高い技術を持つベテラン職人が少なくなる中、往時の素材をできる限り使い、最善を尽くしたと自負する小川さん。「美しい仕上げを見てもらい、竣工当時の創意工夫と技術の高さを実感してほしい」と力を込めた。


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