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時代の正体〈502〉横田弘さんと相模原事件【2】社会の中に優生思想 障害者団体代表・渋谷治巳さん

時代の正体 神奈川新聞  2017年07月27日 13:38

しぶや・はるみ 横浜市磯子区で障害者の作業所2カ所とグループホームを運営する一般社団法人REAVA(ラーバ)理事長。当事者団体「障害者の自立と文化を拓く会『REAVA』」代表。
しぶや・はるみ 横浜市磯子区で障害者の作業所2カ所とグループホームを運営する一般社団法人REAVA(ラーバ)理事長。当事者団体「障害者の自立と文化を拓く会『REAVA』」代表。

しぶや・はるみ 横浜市磯子区で障害者の作業所2カ所とグループホームを運営する一般社団法人REAVA(ラーバ)理事長。当事者団体「障害者の自立と文化を拓く会『REAVA』」代表。
しぶや・はるみ 横浜市磯子区で障害者の作業所2カ所とグループホームを運営する一般社団法人REAVA(ラーバ)理事長。当事者団体「障害者の自立と文化を拓く会『REAVA』」代表。

【時代の正体取材班=成田 洋樹】相模原障害者施設殺傷事件から1年。障害者の存在を否定的にみる優生思想は、果たして被告だけの問題なのだろうか。身体に障害がある脳性まひ当事者で、故横田弘さんとともに障害者運動に取り組んできた渋谷治巳さん(61)に聞いた。

 障害者がヘイト(憎悪)の対象になる事件がいつか必ず起きるという予感がしていた。強者が勝ち抜くのがよしとされる能力主義の社会になっている一方、弱者の中で憎悪の矛先がさらに弱い人に向かう風潮があると感じていたからだ。世の中の人々は障害者の存在を低くみる本音を建前で抑えている印象をこれまで持っていたが、今回の事件はパンドラの箱を開けてしまった感じがしている。再び同様の事件が起きないと言えるだろうか。

 事件の根底には、優生思想がある。植松聖被告は衆院議長に宛てた手紙で、「障害者は不幸しかつくらない」「重度障害者が安楽死できる世界を目指す」と記していた。優生思想が極端な形で現れた事件だったが、今の社会のありようと無関係ではない。

 子どもが五体満足で生まれてきてほしいと願うのは、親としての素朴な愛情だと思う。否定するつもりはない。だが、その願いは裏を返せば、障害を持って生まれてきてほしくないということでもある。新型出生前診断で染色体異常が見つかった場合、9割以上が中絶を選ぶ時代だ。

 社会の底流にはいつ爆発してもおかしくないマグマのように優生思想がある。だが、多くの人たちは自らの内にある優生思想を自覚したくないのだろう。あの事件が突き付けたことに向き合わずに、「極端な考えを持った被告が起こした事件」としてだけ受け止められて事件が風化していく可能性が高い。

一過性ではなく


 横浜市港北区で生まれて保土ケ谷区で育った渋谷さんは、都内や県内の養護学校に通った。小学部5年生と養護学校高等部卒業後の計3年半ほど入所施設での生活を経験。30歳前後から横田さんと一緒に障害者運動に取り組んできた。10数年前からは保土ケ谷区の実家を離れて、磯子区内の集合住宅でヘルパーの介助を受けながら1人暮らしをしている。

 小学生と年1回ほど交流していて質問されることがある。「どこに住んでいますか」「何を食べていますか」「電車やバスにはどのようにして乗っているのですか」「買い物はどのようにしているのですか」-。大人からも同じような質問を受ける。普段、障害者と接する機会が少ないのだろう。障害者の暮らしへのイメージがいかに希薄かが分かる。

 障害者を巡る状況はいま、どうなっているか。車いす利用者が暮らすことができる民間の賃貸住宅はほとんどない。障害者が働きやすい職場はどれだけあるだろうか。障害の有無にかかわらず共に学ぶインクルーシブ教育は進んでいるか。行政が当事者団体の要望に押される形で推進する姿勢を示しているが、普通学級ではなく特別支援学校や特別支援学級に通う子が増えている現実がある。

 クラスに車いすを利用する子がいる、自宅の隣に障害者が住んでいる、職場の同僚や上司、部下に障害者がいる…。学校や地域、職場で一緒に過ごすことが当たり前になっていたら、あのような質問は出てこない。共生社会に向けて障害者と健全者(健常者)の生活の場を分けない取り組みをいかに進めるかが問われている。

 津久井やまゆり園の再建策についても同じことが言える。障害者を施設に集め続けるのは、私たちが目指すべき共生社会には逆行する。何よりも、どこに誰と住むかは当事者自身が決めるというのが大前提だ。

 県は、社会に広がる優生思想が事件の根底にあるということを理解しているかどうか疑わしい。事件後の対応がずれているからだ。例えば、障害者と健全者の交流イベントが今秋予定されているが、一過性のイベントでは共生社会はつくれない。

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