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ファンに感謝 神奈川フィルの平成を振り返る

カルチャー 神奈川新聞  2019年04月26日 17:57

「テレビに出るから人気になるのではなくて、地道に地域でお客さんと向き合って演奏することが大切。そうすればお客さんにもきっと思いが伝わるはず」と語る楽団員の青木るね(左)と坂東裕香=かながわアートホール
「テレビに出るから人気になるのではなくて、地道に地域でお客さんと向き合って演奏することが大切。そうすればお客さんにもきっと思いが伝わるはず」と語る楽団員の青木るね(左)と坂東裕香=かながわアートホール

 来年創立50周年を迎える神奈川フィルハーモニー管弦楽団。慢性的な赤字を抱え、一時は存続が危ぶまれた時期もあったが、現在は国内の主要な人気オーケストラとして、注目を集めている。地方オーケストラが奮闘した平成を振り返る。

■ 起死回生

 1970年に発足した神奈川フィル。地域に密着した活動を通して、県民を中心に音楽を届けてきた。

 ところが一時、約3億円の債務超過を抱えた同団は存続の危機に直面する。景気低迷と公的助成金の削減などで日本のオーケストラの多くが財政難にあえぐ中、同団も厳しい状況を打破できずに長年の負債が膨らんでいたのだ。

 2011年3月に東日本大震災が発生すると、地震の影響で公演が次々と中止に。楽団の危機的状況にさらに追い打ちをかけることになった。

 同団を救ったのは震災直前の同年2月、神奈川フィルを救うために設立されていた、官民一体となった支援策「ブルーダル基金」だ。団員らが県内各地で募金を呼び掛けるなどし、個人の寄付金が計1億2千万円を超えるなど“奇跡”を成し遂げ、起死回生を果たした。

 14年、神奈川フィルは公益財団法人として再出発した。

■ 意識改革

 震災や経済的な危機を経て、団員の意識も大きく変化した。

 演奏終了後、団員たちの意志で自らロビーに足を運び、観客を「お見送り」する取り組みが始まった。

 1994年に入団し、バイオリン奏者として活躍する青木るねは言う。「バイオリンはたくさんいるのでお客さんに直接、名前を覚えられたりすることは今までなかった。けれど、終演後、『あなた、名前は?』と聞かれて、お客さんと距離が一気に縮まってすごくうれしかった」

 地域に密着した「マイオーケストラ」であること。

 平成に起きた度重なる危機を通して、神奈川フィルが今も大切にする価値観だ。

 17年に入団した首席ホルン奏者の坂東裕香は「上手な演奏をしないと、終演後にお客さんと顔を合わせられないと思いながら、いつも舞台に立っています」「『お見送り』は、自分のモチベーションを上げる大切な取り組みです」と笑顔を見せる。


演奏会終了後、募金を呼び掛ける神奈川フィル楽団員=2011年10月2日、県立音楽堂
演奏会終了後、募金を呼び掛ける神奈川フィル楽団員=2011年10月2日、県立音楽堂

■ 一致団結

 平成に入り、国内オーケストラではSNSを駆使し、ファン層を拡大させてきた。

 神奈川フィルでは16年、公式ツイッターで“ゆるく”情報をつぶやく「中の人」をスタート。フォロワー数が急激に伸び(現在約1万5千人)、ファンの心をつかんでいる。

 人気指揮者の川瀬賢太郎を14年から常任指揮者に起用するなど、音楽と運営の両輪で、同団はこれまでになく一致団結してきた。

 その結果、音楽専門誌「音楽の友」では「あなたの好きな日本のオーケストラ」部門で第4位に輝くなど、音楽ファンの心を確かにとらえている。

 同団と川瀬が取り組んだ権代敦彦作曲の「子守歌」とマーラーの交響曲を組み合わせた演奏会が評価され、川瀬が文化庁芸術祭賞新人賞を受賞するなど、楽団の音楽性についても評価が高まっている。

 櫻井龍一専務理事は、創立50周年を前に「もしかしたら平成で終わっていたかもしれないという危機感は、常に持っていたい」と語る。そして、「高い芸術性を維持しつつ、神奈川フィルが地域の“音楽資産”になれるよう、これからもファンの方に音楽を届けたい」と話している。


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