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火山ガス 規制の情報広まらず 噴火警戒 大涌谷再開(中)

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神奈川新聞  2004年06月06日公開  

大涌谷の立ち入り禁止区域の手前にある注意喚起の看板。表現の工夫が求められている
大涌谷の立ち入り禁止区域の手前にある注意喚起の看板。表現の工夫が求められている

 「せっかく来たのに入れないのか」「もっと上まで行けると思ったのに」

 7月上旬、箱根山(箱根町)の大涌谷。名物「黒たまご」の蒸し場などがある自然研究路の入り口で、観光客が「立ち入り禁止」の看板を前に足を止めた。

 観測史上初の噴火から2年が過ぎた今も収まらない火山ガス。検出される二酸化硫黄(SO2)や硫化水素(H2S)は濃度が高ければ命を落とすリスクがあり、ぜんそくなどの呼吸器疾患がある「高感受性者」は特に危険だ。それゆえ限定的な規制解除にとどまっているが、訪れる人々は必ずしも理解していない。

 火山ガスの影響に詳しい帝京大大学院の矢野栄二教授(公衆衛生学)は言う。「園地でガスの危険性を知るのでは遅い。もっと手前の地点で伝え、町のウェブサイトやチラシもイラストを多用するなど一目で分かる内容に見直すべきだ」

 箱根山火山防災協議会の火山ガス安全対策専門部会で部会長を務める矢野教授が改善を求める根拠は、規制解除直後の昨年7月から同10月までに外国人を含む観光客約1600人に実施した意識調査にある。

 再開に当たり、高感受性者の立ち入りは禁じられたが、そうした規制を日本人の6割が知らず、回答者本人や同行者が高感受性者との回答も5%あった。矢野教授は結果から「リスクのある人が毎日数百人は訪れている」と読み、「事故が起きてからでは遅い」と周知策の改善を唱える。

 脳裏には、やはりガス対策で関わり続けている阿蘇山(熊本県)での暗い過去がある。

 1997年11月23日。山頂付近に約千人の観光客が滞在していたこの日、50代と60代の男性計2人が相次ぎ命を落とした。付近で検知されたSO2は5~8ppm。健康であれば危険ではない濃度だが、最初に亡くなった川崎市の男性(51)はぜんそくで酸素吸入器を持っていた。苦しそうにせき込み、両脇を抱えられた姿が目撃されている。

 教訓を踏まえ、翌98年からガス濃度に応じた規制を開始。以来、「ガスによる死亡事故は起きていない」(矢野教授)という。

 阿蘇山を参考にした大涌谷では、より厳密な基準を採用。SO2については0・2ppm以上が計測されると自動で注意喚起の放送を行う。箱根町の集計によると、昨年7月~今年6月の放送日数は86日。さらに濃度が高まり屋内退避や避難を呼び掛けたケースはないものの、町防災対策室の小林泰彦室長は「ガスの濃度はあまり低下していない。注意喚起を徹底しなければ」と課題を受け止める。

 矢野教授は指摘する。「火山ガスはコントロールのできない自然現象。危険と知らずに訪れるのが一番困るが、『せっかく来たのだから』と考えがちな観光客の意識と行動を前提に対策を講じるしかない」 


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