1. ホーム
  2. 社会
  3. 「本物」の列車デビュー ザ・ロイヤルエクスプレス

デザイナー水戸岡鋭治さんが語るこだわり
「本物」の列車デビュー ザ・ロイヤルエクスプレス

社会 神奈川新聞  2017年07月21日 10:00

デザイナー水戸岡鋭治さん
デザイナー水戸岡鋭治さん

 横浜と伊豆を結ぶ東京急行電鉄、伊豆急行の観光列車「ザ・ロイヤルエクスプレス」が21日デビューする。JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」も手掛けたデザイナー、水戸岡鋭治さんは本紙の単独インタビューに応じ「30年間、JR九州で培ったものを全て投入して最高の物をつくった」と力説した。目指すのは、鉄道を媒介にした「公共」の再生だ。

【写真特集】「JR九州の全てを投入」 その内装は
【写真特集】横浜駅のラウンジ公開

 24年前に造られた8両編成は、見違えるほど変わった。車内はぬくもりに満ちている。くぎを使わない組み木細工の照明や仕切り、フランスさらさの椅子、天井のステンドグラスなど、随所に見て取れる職人の手仕事。ウォールナットの壁やナラの家具、ムクノキの食卓、寄せ木細工の床、ドーム状の格天井も1両ごとに木の色や種類が異なり、明暗の表情を見せる。模造品、量産品でない「本物」であつらえた列車だ。

木を使う


 かつて木材は、鉄道車両にはタブーだった。燃えやすいとの懸念からだ。「現代の技術を駆使すれば使えるんです。壁面はアルミの上に0・2ミリの板を張り付けることで不燃基準をクリアしました」。水戸岡さんはそう解説する。安らぎを与える木をふんだんに使いたい-。それを実現するためのノウハウが「九州で培ったこと」だった。

 その九州でも、今までにない素材に対する反発が当時はあったという。経営陣や現場の保守担当者を根気強く説得し、実現したのが「白いかもめ」「ゆふいんの森」といった、今やJR九州を代表する特急だ。

 「手入れの難しい素材を使ったことで、現場のメンテナンス技術が格段に向上したそうです」。木は燃えにくく加工すればいい。革は丁寧に磨けばいい。白い車体は何度も掃除すればいい。会社の都合よりも、利用者に心地よい時間を味わってほしい、との思いを優先させた。

褒め言葉


 「こんなに(車両に)お金をかけては、利益が上がるとは思えません」。静岡県伊東市の伊豆急車両基地で15日に行われたお披露目式で、水戸岡さんはそうスピーチし、居並ぶ東急や伊豆急の幹部、沿線自治体関係者らの苦笑を誘った。

 だが、言葉には続きがある。「普通にやったら、倍かけてもできないでしょう」。数億円とされる車両改造費のことだ。

 「見積もりなんて何の根拠もありませんよ」。予算の枠に収めるべく、妥協しながら既製の材料や調度品を選ぶ方法を、水戸岡さんは採らない。全国に散らばるメーカーや職人を自身で吟味、交渉するのだ。

 その都度、列車のコンセプトを情熱的に語る。「手間暇を惜しまない。できることは何でもやる。そういう舞台を職人さんたちに提示すれば、みんなが『いい物ができそうだ』と予感を共有し、期待値を超えた仕事になるんです」

 自著にもこう記す。

この記事は有料会員限定です。

月額980円で有料記事読み放題/100円で24時間読み放題のコースも。詳しくはこちら


シェアする