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パラ陸上、義足「ぴょんぴょんする感覚」 21歳の挑戦

スポーツ 神奈川新聞  2019年04月13日 09:30

2020年の東京パラリンピック出場を目指す山下千絵さん
2020年の東京パラリンピック出場を目指す山下千絵さん

 13日で2020年の東京パラリンピック開幕まで500日。わずか2年の陸上競技歴ながら、その夢舞台を狙う女子大生が川崎にいる。法政大学スポーツ健康学部4年の山下千絵さん(21)は「日常用の義足では味わえない、ぴょんぴょんする感覚や勝負できることが楽しい」と目を輝かせ、障害者スポーツ全体を盛り上げたい思いも抱く。

 カーボン製の義足を装着し、陸上トラックを颯爽(さっそう)と走る姿は、障害があることを感じさせない。「競技を始めてから、障害のことはあまり気にならなくなりましたね」。山下さんは身長169センチと恵まれた体格を誇り、日本のパラ陸上女子(T64クラス)の短距離界で次代を担う一人とされる。

 川崎で育った小学4年の時、交通事故に遭い、左膝から下を切断する手術を受けた。5歳からテニスに親しんでいたスポーツ好きの少女は、現実を受け入れられなかった。「いじめられるかもしれない」。退院後、通っていた小学校では切断した事実を隠し通したという。

 都内の中高一貫校に通った時代もプラスチックで覆った義足を使うなどし、周囲に障害のことを触れられないように過ごした。それでも、中学からは健常者に交じってテニスボールを追い、高校では主将を務めるなど仲間にも恵まれた。いつしか、障害者スポーツを盛り上げたいという思いが芽生えた。法大に入学すると、導かれるように一人の競技者と出会った。

 2016年春、日本初の義足の走り高跳び選手として00年のシドニーパラリンピックに出場した鈴木徹さんが、大学に講義に訪れた。トップアスリートとして自身や記録と向き合う日々を生き生きと語る姿に心を揺さぶられた。

 「カーボン製の義足をはいてみたい。こんな世界もあるんだ」。1年後には、障害者アスリートとして一歩を踏み出していた。

 川崎市の等々力陸上競技場などを拠点に個人練習を重ね、18年9月には「日本パラ陸上競技選手権大会」の200メートルを、32秒18の自己ベストで制した。

 競技の傍ら、月3回ほど小学校での義足体験授業にも参加する。子どもたちと直接話したり、患部を触ってもらったりすることで、「偏見という壁だって壊せるかもしれない」と実感を込める。

 19年シーズンは国などから助成金を受けられる「強化育成選手」になるための設定タイムをクリアすることが目標だ。まだカーボン製の義足の使い方にも大きな伸びしろを残すスプリンターは根っからの負けず嫌い。「タイムが出ないのは悔しいし、それに挑戦するのは楽しい。わたしが競技をやることで、周囲の学生や授業した子どもたちがもっと障害者スポーツにも興味を持ってくれたら」。500日後に迫った東京パラリンピックまで一気に駆け抜ける。


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